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2018年1月28日 展覧会

レポート|アーティストトーク「今村遼佑ー雪は積もるか、消えるか」展

サイト&アート01 今村遼佑「雪は積もるか、消えるか」(2018年1月6日―2月18日)にあわせ、1月6日(土)にアーティストトークを開催しました。

当館ディレクターの服部さんから、今村さんに展示を依頼することとなった背景を説明し、続いて今村さんからは過去の作品と今回の展示についてスライドを使って説明をしていただきました。最後には、全員で展示室に移動し、展示空間の中で、空間と時間についてお話しいただきました。

アートラボあいちが入っている建物は、昭和8年に建てられました。戦前、名古屋にあった建物の多くは、空襲で焼け落ちてしまいましたが、この建物は残り、愛知県庁大津橋分室として長年使用されてきました。

この建物がアートラボあいちとなり、展示用の白い壁が建てられて、元からある壁が見えなくなっているように、古い建物は改修が繰り返されるうちに建てられた当時とは異なる姿になっていきます。服部さんは、古い建物が残らないのはもったいない、と日ごろから感じていたそうで、建物やその価値、保存の難点について、展示をきっかけに考えられないだろうか、ということで「サイト&アート」のシリーズが始まりました。今回の展示はその第1回となります。

今村さんからは、最初にこの展覧会のタイトルについてお話を伺いました。

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今村さんのこれまでの個展タイトルには、『冬の日』『ひるのまをながめる』など、時間や季節にまつわる言葉が入っているものがあります。形を持っているようで持っておらず、展覧会を限りに消えてしまう、インスタレーション作品の在り方が、季節に似ていると感じていることから、季節や時間に関係する言葉を選ばれるそうです。今回の展覧会タイトル『雪は積もるか、消えるか』は、雪が降っているのを眺めていると、雪が積もったときの真っ白な景色と、雪が解けて消えたときのいつも通りの景色、この2つのイメージが頭の中で重なるのが面白い、と思ったところからつけたそうです。

この展覧会で、イメージの重なりから着想を得ているものは他にもあるそうです。例えば、展覧会のチラシ。耐光性ニスと非耐光性ニスを使って印刷されていますが、これも、ニスが黄変したときと、黄変しなかったときの2つのイメージが重なります。さらに、展示室の窓の近くでは海辺の映像が流れていますが、これも陸と海との境界である海辺と、建物の内側と外側の境界である窓辺のイメージの重なりから生まれたものだそうです。

話の中心は展示空間の特徴に移ります。

アートラボあいちは、東側と南側に窓があり、その東側は幹線道路に面しています。窓をとおして、午前中から昼過ぎまでは自然光が、夕方は道路を挟んだ向かいのビルの窓に反射された光が、そして夜になると街灯の光が展示室に入ってきます。

今村さんが設営作業で展示室に一日中いたとき、展示室への光の差し込み方が目まぐるしく変わっていくことが気になり、そこからオイルパステルのドローイング作品が生まれたそうです。この作品に使われているオイルパステルは少し特殊な画材で、光が当たらないと鈍色に見え、光が当たると玉虫色に輝きます。特に自然光では色がよく見えます。紙にドローイングした作品を壁に貼ったり、展示室の壁に直接描いたりすることで、壁に当たる光が時間によって変わる様子に目が向くようになるのでは、と考えられたそうです。 

次に、ホワイトキューブ以外の場所で展示をすることについてどう考えているのか、伺いました。

2014年に、奈良の借家として使われていた古民家で展示をした際、場所に合わせて特別な展示をするのではなく、人が住んだり、去ったりする流れの1つとして、展示を位置づけたそうです。これ以降、自分がしてきたことを空間に合わせて変えなくても、場所と自分との関連性は自然と生まれるのではないか、と思って展示をしているそうです。

最後に、展示室に移動して、昼と夜との展示の様子の違いについてお話を伺いました。

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ドローイングは夜になると見えにくくなりますが、電気ストーブのオレンジ色の光など、昼間には気づかないささいなものが、夜だからこそ見えてきます。今村さん曰く、昼も夜も同じ展示だけれど、昼と夜とでは見せるものが変わる、全てを常に同じ状態で見せるのではなく、用意したものが、周囲の環境に合わせて変化していく中で、それぞれの時点での状態を見てほしい、とのことでした。

雪のように、どこか存在が不確かな感じのある今村さんの作品ですが、今回お話を伺ったことで、少しだけ理解を深められたような気がします。また、時間による展示風景の変化を知って、何度も展示室に足を運びたくなりました。(文:岩崎)