貝殻や石や鳥の羽といった自然物と、モーターや金属部品などの人工的な素材を組み合わせた藤田の作品は、まるで生命を吹き込まれたかのように、一定のリズムを刻んだり音を発したりします。藤田は、さまざまな要素や機能から成るものを一つ一つ分解して再構成することで、それぞれは見慣れているはずのパーツから思いがけない形態を作り出し、華麗に作品へと昇華させてきました。
今回、藤田は瀬戸の街を散策し、マンホールや石垣、公園のタイルなど、街の至るところに見られる特徴的な模様を粘土を使って採集し、その凹凸を音に変換することで、瀬戸の街を聴覚的に再現しようと試みます。視覚的にも美しいこれらの模様は、藤田自らが設計したレコードプレーヤーやオルゴール機を通じて、音となって空間に響き渡ります。また、陶片に土が降り積もる作品では、焼かれることで陶片として固定された過去の時間と、その上に積もりゆく生の陶土がはらむ可変的な未来という、2つの異なる時間軸を融合させることを試みています。
ゆるやかに回転し続ける貝や、模様が音に変換されていく様子、モコモコと降り積もった土を、わたしたちはついじっと見つめていたくなります。それは、有機的な形態や均質ではないリズム、ひいては偶然が導き出すいびつさが、鑑賞者の感覚に訴えかけているからかもしれません。