大きな布に包まれたお化けのような生き物に、顔がひとつ、ちょこんと出ています。そんな印象的なポートレートは、プテラが継続して制作してきたシリーズで、実際には家族や職場の同僚、ペットなど、親密な関係にある生き物同士が布にくるまって、一つの大きな身体を構成しています。プテラはこれまで、家族やコミュニティにおける人間関係や、人間と動物や自然の関係性について考察し、他者とのコミュニケーションを題材にした作品も数多く制作してきました。瀬戸に長く滞在したプテラは、この地域における人と人、人と自然、人と街の、変わり続ける関係性に着目した作品を展示します。
《過去、現在、未来がひとつに》は、必ずしも血縁関係によらないさまざまな形で結ばれた“家族”の多様性と一体感に焦点を当てたシリーズです。家族とは、精神的に繋がっているだけではなく、肉体的、社会的、文化的にも結びついたひとつの個体でありながら、同時にそれを構成するのは個々人の身体であるということを、視覚的に示しています。
《鳥とネット》は、人々の生活と自然の関わり方について考察したコラージュ作品です。日本ではよく見られる、マンションのベランダなどに設置された防鳥ネットを見たプテラは、その目的とは逆に、人が自らをネットで覆う一方で鳥たちこそが自由に動き回っているのではないかと新鮮に感じたといいます。人と鳥とネットの関係を見直すことによって、人が持つ自由への欲望とその限界や、他者を受け入れる必要性について考えを巡らせています。
《瀬戸の詩的断片》は、海外の多くの国に比べて、日本の街の景観はイメージではなく文字で埋め尽くされているというプテラの印象を出発点にしています。プテラは、瀬戸に住む人々に瀬戸に対する想いや気持ちを示す一文字を陶片に書いてもらい、それぞれの思いを紡ぎ合わせることで、普段は見過ごしてしまいがちな感情や無意識下の感覚を炙り出そうとしています。