• 現代美術地域展開事業

出品作品の総復習(その2)

  • 2021年2月26日

出品作品の振り返り、その2。
解説付きでご覧下さい!!

<下道基行>

展示風景より、下道基行《14歳と世界と境》(2013-2019) Photo by Tamotsu Kido

 中学校2年生である14歳の子どもたちに特別授業を行い、「身の回りの境界線」を探してもらいます。彼らの発見した境界線の話をその地元の新聞に掲載するプロジェクトです。大府や岡崎、刈谷など、尾張と三河の「境界」に近い場所の中学校で始まったこのプロジェクトは、その後台湾や韓国など、海外でも展開され、それぞれの場所の中学生の言葉が、それぞれ地元の新聞に掲載されました。 14歳はまだ世界も広くなく、大人と子どもの間を揺れる年代。そんな彼らが考える「境界線」とは一体どのようなものなのでしょうか? 特別授業で集められた文章が、各地元の新聞の「14歳と世界と境」という小さなコーナーで連載されることで、世界の様々な社会のニュースと、14歳の小さな世界の物語とが並びます。

<折原智江>

展示風景より、折原智江《記憶の石化》(2021) Photo by Tamotsu Kido

 石のように見えるこの塊は、2020年1月1日から2020年12月31日までの、365日分の新聞紙を読みながら積層させ、刃物で削ることで出来上がりました。新聞の表面は、長い年月を経て姿を変えた石のように、曖昧な形に抽象化されています。うっすらと文字の見えるその内部には、途方も無いほどたくさんの具体的な出来事が記されていることがわかります。
  今回の作品では、新聞が新聞であるかどうかわからなくなるような物体を、まさに紙に文字を記してさまざまな情報や記憶を蓄積する図書館の本棚のあいだで展示します。まるで神体としての石のように、祈りを捧げられる対象として空間に鎮座するこの物体は、情報や歴史を紙に蓄積し、出来事を記憶し、未来に残そうとする人間の意思や営為について考えさせます。

<平川祐樹>

展示風景より、平川祐樹《a film by #01》(2021) Photo by Tamotsu Kido

 取調室のような密室の空間で、人の手や本といったオブジェが机に並んだ光景が、左右にゆっくりと動くカメラで捉えられています。その映像を映すディスプレイが掛けられた壁の裏面には、撮影された机の上を、反対側から見た様子が映されています。
 これらの映像のイメージの元になっているのは、1920年代から1930年代の昭和初期に公開されたものの、焼失や紛失のために元のフィルムが現存していない映画の1シーン。フィルムが現存しないにもかかわらず、なぜその映画のシーンを再現することができるのでしょうか。この作品で参照しているのは、公開当時に残された、記録写真やブロマイドなどの関連資料です。こうした資料から当時のセットを再構成し、かつて撮影された空間を再びカメラで追った様子を捉えた映像は、「虚構」に過ぎなかったスクリーンの向こう側にあった過去の物語の空間を、現実に存在する現代の空間に結びつけます。役者もいなくなりストーリーから切り離されたこの場面が、一度失われてしまった映画のフィルムが持っていたであろう記憶を、詩的に呼び起こすのです。