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2018年12月5日 レポート

レポート|人材育成プログラムメンバー振り返り回

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2018年11月25日(日)18:00〜19:00 人材育成プログラム振り返り

9月からスタートした人材育成プログラムも、関連企画展の最終日をもって1つ区切りとなりました。そこで、今回の人材育成プログラムの活動について、今後の活動も見据えつつ、当日参加可能だった受講メンバー(以下、メンバー)と、企画者である会田大也さん、あいちトリエンナーレ2019ラーニングチームスタッフ(以下、スタッフ)と振り返りを行いました。
今回は付箋を使って意見共有をしました。思いついたことを付箋にどんどん書きとめ、同じ内容に関する付箋どうしをあつめ、それぞれ、"KEEP"(継続していくこと、よかったこと)、"PROBLEM"(課題)、"TRY"(これから改善すること、挑戦していきたいこと)の3つのカテゴリに振り分けながら、意見を共有していきました。

APGはどうだったのか

まず、ほとんどの人が言及した「場所・空間」について。
これは、アート・プレイグラウンド(以下、APG)に関してで、今回、会期中つねに変化を続けていた場所です。2Fの一角にカーペットを敷いてエリア分けをし、資料を自由に閲覧できるコーナーと、ワークショップなどのアクティビティに参加できる、通称「からまれテーブル」のエリアを設定しました。この場所にはメンバーが常駐し、来場者へ声をかけたり、ワークショップを実施したりと活気がありました。
メンバーがリラックスした雰囲気で話をしながら場にいたことが、ハードルを下げて立ち寄りやすい雰囲気をつくっていた一方で、内輪の盛り上がりになっていなかったか、来場した人はどう思ったのか、と実は"PROBLEM"面もあったかもしれない、という意見が出ました。
また、普段「アートラボあいちがどのように来場者を迎えているのか」を受講者とシェアする前に初日を迎えてしまい、それまで作業をしたりみんなで話をするところだった場所が、作品の置かれた「みる場所」となったことに気付き対応するまでに時間がかかってしまった(例えば音の出る作業を控えたり、鑑賞者の視点に立った雰囲気づくりなど)。「どういう場所であるべきなのか」という点についての議論が欠けていたかも、と会田さんが意見をまとめて振り返りました。

「からまれテーブル」については"KEEP"でしたが、絡み方についてはメンバーそれぞれ悩んだり、スムーズにいったりと様々だったようです。作品の感想を求めて「どうでしたか?」と聞いたときに、「わからなかった」と言われると、そこでつまってしまって、どうしたらいいのかわからず困った、という人もいました。会田さんからは「共感できる項目をみつけて、そこから会話を深めていくといい」というアドバイスが。例えば「なにがみえますか?」と聞けば、いろいろ返ってくるので、それに共感しながらさらに話していく、といった具合。
会話などのきっかけとしては、コーヒーやお茶の提供がとても効果的だったという意見も。ただし、提供するタイミングをはかるのが難しかったり、提供する・しないもマチマチだったりと、そのありかたには曖昧さがあり"PROBLEM"としても取り上げられました。
APGの受付があれば全体が説明できるという意見に、それだとしっかりしすぎて、立ち寄りやさすさが薄れてしまうので、受付がなくても全体を説明できるようなフォーマットがあるといいという話になりました。それにはコーヒーやお茶の提供は1つの解決策かも、と話がつながっていきます。コーヒーを受け取ることで、しばしそこに滞留し、その間にAPGの説明をして会話をはじめるきっかけが生まれ、実際にAPGでもそのように機能していました。ただし、サービス過剰になる可能性や、作品保護の観点から見たときに飲食に抵抗があるという意見も。このあたりは"KEEP"しつつ、"PROBLEM"でもあり、新しい方策を"TRY"することを考えていけるかもしれません。

ここで、「APGの大きな方針が最終的には決まりきらなかった気がする」という会田さんからの爆弾発言が!とはいえ、展覧会設計というのはたった一度のチャレンジで全てが分かるようなものではないので、それほどネガティブな意見ではなく、このことは最後まで皆が結論に固執せずバリエーションを産み出すチャレンジをしていた事実の裏返しでもあります。また参加者からはAPGがはじまってから、自分で表現したいという気持ちが、アートを支えたいという気持ちより大きくなってしまったような気がする、という意見も。そこから、目標の再設定を行うとよかったかもしれないという意見も出ました。
これらの点について、会田さんからは展覧会来場者が来場前、来場中、来場後などに心に思い浮かべる事象から体験の時系列を描き出す「カスタマージャーニーマップ」をもう一度作成してみることが提案されました。レクチャーのなかで事前に一度つくったことのあるカスタマージャーニーマップですが、実際に今回のプログラムを経た今、もう一度作成してみることによって前回気がつかなかったポイントがみえてきたり、新しい課題や解決策が見つかるといいます。精度のあがったマップから、もう一度APGの方針を確認するといいということで、早速トライしてみたい提案でした。

また、APGではさまざまなワークショップが行われましたが、それについて。「自分の企画をやってみたかったけど、結局やらなかったので、次はやってみたい」、「メンバーがいないと参加できないワークショップばかりだったので、ハンズオン的に人がいなくてもセルフでできるもの」、「ラジオ局」、「(参加作家ではない)アーティストと一緒に作品をまわる」など、実現されなかったものの、今後の実施が楽しみな"TRY"がいくつもありました。
ここまで、APGについて様々な意見が出ましたが、逆にAPGにとらわれすぎていたかもしれないという声が。メンバー同士でもっと作品や作家について意見を交わしたかったという意見です。勉強会などもひらけたらよかったという意見もありました。
「あいちトリエンナーレ2019」で実施を予定しているAPGのプレが、このように活発に課題を発見して、議論していくことのできる機会として実施できたことは、大きな成果です。

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メンバーについて

メンバー同士の関係性についても多く意見がでました。
各メンバーが他人に言われたからやるのではなく、自分の頭で考え続けて活動していたことが素晴らしかった、これはぜひ"KEEP"したいと会田さんから。縦割りではなく、平等な関係性が持てたという意見や、この関係を継続していきたい、SNSでのディスカッションも"KEEP"だね、とメンバーからいくつも"KEEP"の意見が。
一方で"TRY"として、ダメ出しをする、みんなで決めるだけではない、という意見もあり、みんなの意見を受け入れながらも、決断する時はする、という経験も必要です。
今回、役割分断をおおまかに決めて活動しましたが、そのことについても意見が出ました。APGのチームに最初手をあげていなかったので、企画が始まってからどのようにAPGに関わればいいかわからなくて困った、という意見です。遠慮しなくてもいいと言われても、なかなか自分から聞いて行動することができなかった、という人も少なくありませんでした。「遠慮して聞かない」「気を使って発言をしない」ことを改善することに"TRY"という意見も出ました。「自分ごと」で活動することをスタート時から意識して活動してきましたが、どのように自分ごとにしていくかは、各自の葛藤も必要ですが、まわりの理解や手助けも必要かもしれません。
今だから言えるといった感じで、メンバーの顔と名前を覚えるのに時間がかかったという人もあり、メンバーの関係をつくっていくカタチもいろいろと考えていきたいです。

情報・展示

話は情報共有について。アイディアを共有するときに、口頭だけの場合も多かったので、できるだけすべての意見についてアーカイブをとっておけるとよかったという意見が出ました。今回、人材育成プログラムでは情報共有やウェブを介した議論に、多くの人に馴染みのあるツールだという理由からFacebookを使用していましたが、20名を超える多くの人が関わり、いろいろな事柄について話をする今回のようなプログラムで使用していくにはFacebookだけでは限界も感じられました。適切な情報共有・コミュニケーションのツールをみつけていく試行錯誤も今後への"TRY"です。
情報発信については、展覧会の広報自体が遅めであり、APGの具体性なども見えてなかったので、発信自体がしにくかったという"PROBLEM"意見がいくつかでてきました。ただ、会期中に授業の課題で展覧会のレポートを書くために、学生が訪れたことがあり、その授業や担当教授を把握することで次回の情報発信に役立つという具体的な改善案も出ました。
展示に関しては、動線がわかりにくいという"PROBLEM"が。看板をつくったり、目立つ動線サインを設置するなど、メンバーでも工夫を凝らしましたが、展示空間をこわさないようにしつつ、明確に案内するためにどうしたらいいのか、頭を悩ませてきました。暗幕を使用した展示では、どんな美術館でも案内をするのは難しいと言う会田さん。どうしたらいいか要検討だけど「看板デザインはもっと素敵にできたらいいよね」というスタッフからのプロ的な意見も出てました。また、「1から作家とコミュニケーションをしながら展覧会をつくってみたいと思った」というメンバーも。行動に移すのは大変かもしれませんが、少なくともそう思えるようになったことが、今回参加したことの大きな成果であり、今回のプログラムから将来のプロフェッショナルキュレーターやエデュケーターなどが出てくるかも知れない、と会田さんが力強く語ります。

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最後に

最後に「ラボ自体の自由度がKEEPだった」という意見が。公共的に運営されている場所で、ここまで自由に活動できる場所はほとんどない、と会田さんも同意します。
自由だと感じもらえる雰囲気を維持しつつ、これからもどのような人材育成プログラムを展開できるのか、すでに次の展開に向けて頭はフル回転です。