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2023年5月26日 レポート
アーティストトークの様子|「作物から実る種-それぞれの作品について」
「作物から実る種-それぞれの作品について」
実施日時|2023年5月6日(土)15:00〜16:00
会場|アートラボあいち3階
参加人数|29名
内容|「作物から実る種-それぞれの作品について」をテーマに、展覧会を企画した作家のMITOSさんがファシリテーターになり、参加作家の佐々木恵海さん、小杉滋樹さん、瀬川晃さんが、それぞれ作品を前に作品や制作について語りました。
それぞれのトークの中で印象に残った部分をご紹介したいと思います。
展覧会を企画した作家のMITOSさんのご挨拶から始まりました。
3名の作家とは出会って日が浅い中、MITOSさんの勘で参加作家に選んだことを話されました。
まずは、佐々木恵海さんのトークです。
写真やドローイングを元に、日常にあるあたりまえの風景の一部を切り取って油彩で描いている佐々木さん。
佐々木)切り取ったモチーフは、形に起こすとヘンテコなものが多いけれど、それぞれにいろんな表情があると思います。
日常の一コマを写した写真はそれ自体はピンとこないものですが、絵画になると面白いです。
この春、名古屋造形大学大学院造形研究科造形専攻を卒業され社会人となり、最近は通勤途中にiPadでドローイングしているそうです。
例えば、運転しながら肘をついてタバコを吸うところをみたりすると、車の中という空間ではその人の素の様子が見れたりするのがおもしろいと話していました。
[風土]では3名の中で一番多い23点の絵画と4冊のポートフォリオを展示しています。MITOSさんのファシリテーションに応答しながらの初々しいトークでした。
続いて、小杉滋樹さんです。
アートラボあいちでの展示は、2019年「ユーモアの作用、あそびの効用 HUMOROUS BEHAVIOR PLAYFUL ACTION) 」以来。その時は立体作品の展示でしたが、今回は絵画7点を展示している小杉さん。
小杉)作品は、テーマを特に決めず、思い立ったらなんでも描こうと思い描いてます。経験したこと、見たこと、頭の中のものがモチーフとなります。描いた絵面と見た時の印象がズレたものがイイと思って制作しています。
さらに、3階展示室に並ぶ5作品についてもそれぞれ作品の前で語ってくださいました。
《アブないヤツら》
水槽の金魚をネコが狙っていて同じ水槽の中でお互い見つめてる。出目金とネコが同化しているみたいに見える。
《池の絵》
庭園。太鼓橋に群がる鯉。雪だるまが赤いマフラーを巻いているように見えたらいい。
作品に描かれているモチーフを取り上げ、その見え方について解説をされた小杉さん。
「こんな風に見えるといい。」と語られたように、トーク後に《池の絵》を引きで眺めてみました。確かに橋に群がる赤い鯉が赤いマフラーに、池が雪だるまに見えました!
最後に瀬川晃さんのトークです。
瀬川晃さんのインスタレーションの作品はモアレ※パターンを用いて制作されています。
※モアレとは: 網点などの規則正しい模様が重なった時に、並び間隔の差によって発生する縞模様のこと。
モワレ(moiré)というフランス語が語源。
瀬川)1933年。日本の国連脱退、ナチスの台頭という大きな時代の流れの中でアートラボあいちの建物が建てられたという歴史に興味を持ちました。
建築については専門外でしたが、リサーチを深める作業に面白さを感じ、今回の制作に繋がっていきました。
作品のモアレパターンの紋様になったのはアートラボあいちの建物の装飾です。屋上部分にあるパラペット(手すり壁)からはグリフォン、正面中央の庇からは松明のような紋様、3階バルコニーの床には矢車の紋様、外壁のスクラッチタイル、など様々なところから抽出しています。
これらの紋様で構成されたモアレパターンの作品は、ゆらゆらくるくる回ると視差効果が大きくなり、描かれている紋様が伸びたり膨らんだりするように見え、じっと見ていると、くらくらしてきます。
展覧会をご覧になった後に、建物の紋様を探して実際に見てみてください。さらなる追体験ができると思います。
(レポート|城所豊美)