アーティスト
茨木 のり子
- Ibaragi Noriko
- 1926年-2006年 大阪府出身
大阪に生まれ、医師だった父の仕事の都合で西尾に移ってきた宮崎のり子は、西尾尋常高等小学校(現在の市立西尾小学校)、西尾高等女学校(現在の県立西尾高校)で少女時代を過ごしました。卒業後は東京に出て帝国女子医学薬学専門学校(現在の東邦大学)へ進学し、19歳で終戦を迎えます。戦後、卒業して薬剤師の資格を得たものの、文学の道を進むことを決意し、戯曲や放送童話をいくつか手がけたのち、家事のかたわら「茨木のり子」のペンネームで詩作を始めました。雑誌『詩学』への投稿を重ね、親しい詩人らと同人詩誌『櫂』を創刊します。茨木の詩の、平易だけれども力強さを損なわない言い回しや、物事への透き通った確かな眼差しは、現在に至るまで数多くの人々の心を揺さぶり、とりわけ73歳で刊行した『倚りかからず』は、詩集としては異例のヒットとなりました。また茨木は隣国である韓国の言葉に関心を寄せ、50歳でハングルを習い始めると、数々の韓国現代詩を日本に紹介して文学を通じた交流にも尽力しました。
本展のタイトル「なめらかでないしぐさ」は、茨木が戯曲作家時代に知り合った女優・山本安英との思い出をうたった「汲む──Y・Yに──」のフレーズから採ったものです。茨木が紡いだみずみずしい言葉たちを、この展示室で数篇ご紹介するとともに、西尾のまちなかのさまざまな場所にも、ポスターとして散りばめます。