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2019年8月24日 レポート

レポート|夏アカ集中講義1日目(8/24)

プレゼン大会と辻さんによるレクチャー・ワークショップ

1限目、2限目|プログラム概要説明と自己紹介を兼ねたプレゼン大会
プレゼン大会は、ディレクターやチューターも含めて全員(25名)でくじ引きをし、発表順を決めて1人約6分のプレゼンを実施しました。
自作を紹介したり、自分のできることを発表したり、生い立ちを詳しく語ってみたりと、受講生それぞれのパーソナリティーがわかるプレゼン大会となりました。
プレゼン大会については、コチラ

3限目、4限目|辻琢磨ディレクターによる、レクチャーとワークショップ

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辻さんのレクチャーでは、現代建築や現代美術にとってのコンセプトとはなにか、という問いを抽象絵画をスタート地点に紐解いていってもらいました。様々な事例を紹介しながらコンセプチュアルなものの考え方や価値、意義を話していきました。近現代建築の流れはとても興味深かったです。
要素を極限まで引き算していくことによりみえてくる可能性を追求してくことで、そのものの美しさを引き出していくこともあれば、一方、無秩序に組み合わせたものの中にある多様性を享受していくおもしろさもあります。現代建築を考えていく上で必要な2つの考え方として、演繹(=コンセプトが先にある。新築とか、モダニズム建築)と帰納(=脱コンセプト。リノベーションだったり、建築家なしの建築)という言葉も教わりました。建てられたものが、その空間を使う人に使い方を明示するのか、それともその空間に立つ人が自由に使い方を考えていくいことができるものになるのか。この2つの考え方の間のどこに自分が立つかを意識していくことが、そのまま作家性に繋がっていくとのこと。
建築も美術も、今に至るまでの歴史的な文脈を引き受けた上で、現在の活動に繋げていくことが重要なのだということを改めて実感することになりました。
また、辻さんがコンセプトにはなりえないけど、設計時にいいと思っていることの条件も紹介してもらいました。詩の研究をしていた、ウィリアム・エンプソンさんの7つの考えです。詩がうまく機能している時の条件ですが、1つの要素(言葉)に、多様な意味や機能をもたせることができたり、その逆で多様な要素(言葉)を受入れることができる1つの機能を提示したり、これらは、そのまま建築に置き換えることが可能で、言語的な思考性に建築もあてはめて考えることができるのではないかと考えているそうです。そこから、辻さんの考える建築についてのお話もしてもらいました。今までの建築が、一つの敷地にいろんな素材が集まってきて定着して、ずっと残っていくものをつくることを前提にしている(例|パンテオン、ローマの街中に2000年以上残っている)のに対して、複数の敷地があって、そこをどういう風に動くかということ、その動きそのものも建築になり得るのではないかという考え方です。日本や東洋は木造の建築が主なもので、モノを永く同じ場所に残していくこととは異なる考え方をもっています。例えば、伊勢神宮でおこなわれる式年遷宮は20年毎に建て替えをしていきます。モノは残らないけれど、その仕組みは祭りや神事など文化として地域全体で継承されており、そこにある物質としてのモノ以外の背景にあるモノ、それ自体をも建築として捉えることができます。モノが動くこと、そのモノの文脈も共に建築に内包されているんだということを新たに発見することができました。

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具体的に辻さんが関わったプロジェクトの紹介もしてもらいました。YCAMで実施された活動(プレゼント・シングス / Present Things_2015年)は、山口市内で廃業してしまった公共施設から、いらなくなった什器を集め、それを材料にプレイグラウンドをつくるというものです。建具を組み合わせて迷路の様な空間をつくったり、テーブルを集めて舞台にしたり、同じような什器を集めて山や原っぱのような自然っぽい場所をつくった空間では、あそび方を参加者が自由に考え実施できる空間をつくっていったとのこと。また、ヴェネチアビエンナーレの建築展では、ヴェネツィアングラスを溶かして橋をつくったりしています。
リサーチし、そこがどういう場所であるのか、どういったモノがあるのか、そして何が求められているのかといった地域の文脈を知って、それを読み解き、そこにあるものをどのように動かして建築にするのかを考えることで、建築の文脈に乗せていくということを続けているとのことです。また、今回受講生が実施するプログラムと近いものとして紹介してくれたのが、武蔵野美術大学で実施されたカリキュラム。まず自分の部屋を測量して、困っている所をみつけます。そして、メンバー全員で捨てられないものと共に部屋の中で困ってるところも共有し、だれかの困っている場所に、だれかの捨てられないものを使って、モノを動かして転用しその場所を改善させるというプログラムです。モノと場所の悩みを共有していき、さらにその中で、モノの動きのデザイン(例えば、自分は、Aさんの場所の悩みをGさんの捨てられないものを動かして転用してこんな風に違うものに生まれ替えさせるといったようなこと)を共有していきます。1つ1つは、個別の動きですが、全員が一つのリソースを共有していることで、モノの動きが繋がり1つのネットワークになっていきます。また、このカリキュラムのまとめとして、転用したモノが、元の場所から新しい場所に移動していくまでのGIF動画も作成したそうです。動画は、モノと動きのストーリーがわかる様になっていて、とても興味深かったです。
動く・動かすこと、その動きをみること、それを交互に繰り返していくことで世界を捉えていく、柔軟な思考を育んでいくことになるのではないか、ということを学ぶことができたレクチャーでした。

そして、レクチャーの後は、ワークショップです。これまでの話しを踏まえて、辻さんから提案されたワークショップは、【-モノを動かしたり加えて、場所を今より少し良くするワークショップ-】。カリキュラムは、以下のようなものです。
1.アートラボあいちを測量、モノを写真に撮影し、手書きで図面化する
2.アートラボあいちのスタッフに、困っていることやなんとなく違和感があったりうまくいっていない場所について聞く
3.自分の持ってきたモノについてのストーリーをチームで共有する
4.一人一案(あるいはグループで)、モノを動かしたり、追加したりしてアートラボあいちを今より少し良くする提案を考える(誰のモノを使っても良いし、アートラボのモノを使っても良い)。モノは本来の使い方を転用して提案する。
5.提案を発表する(WS内で実現までは行わない)

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アートラボあいちの測量は、空間とモノの2班にわかれて、限られた時間の中で測量を進めていき、ある程度測量できたところで、模造紙に100分の1サイズに縮尺した図面を引いて、その図面にアートラボあいちのスタッフからヒアリングした内容を付せんで貼付けていきます。それを全員で共有して、1日目の集中講義は終了しました。
カリキュラム3のモノについては、宿題としFacebookのグループページに投稿して共有しました。
この日の最後には、スイカをみんなで食べて初日の感想をふりかえり、翌日以降の英気を養いました。

レポート|近藤令子