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2017年7月6日 展覧会

展覧会レビュー「black, color」2017.5.27-6.25

動物を介した二つの世界

木村充伯、タン・ルイ二人展「black, color」

Blackは、人間や動物など生き物の持つ自然の色を扱う木村充伯を、colorは広告の切り抜きや洗濯バサミなどの日用品の鮮やかな色を用いるタン・ルイを、それぞれ表すという。Blackとcolorの二人の作家は、どちらも自然と人工の正反対にみえるものの奥に、ユーモアと生々しい感触を覗かせる。

 木村は、板に彫ったナマケモノ、猫、クマ、ラッコといった動物たちを、それぞれが属する高さで、木の構造体に据えている。削られた板の表面はささくれ立っており、まるで動物の毛のようである。とはいえ、動物の顔つきや肢体はとぼけた妙味を持っており、リアルというわけではない。ユーモラスな生硬さとある種の生々しさは、それらの動物が生きているものなのか死んでいるものなのかを、わからなくさせる。動物たちの縮尺は様々だが、とりわけそこに混じった人間は矮小化されているようにみえる。木枠上の人間は、コアラよりずっと小さい。壁には無数の小さな人間が描かれているが、それを写し取ったと思しきティッシュの山は、その存在をまるで儚く感じさせる。それは、人間が動物を含んだ世界の中心にいるどころか、もっと卑小なものだとでも言いたげである。木村の作品では、動物が醸し出す親しみやすいユーモアと飄々とした離人感のようなものが一体となって、一抹の恐ろしさを感じさせる。

替わってタン・ルイは、雑誌や広告チラシから切り取った鳥や花などをコラージュし、ドローイングを施したレリーフや板を立て掛けて、色鮮やかで毒々しい森のようなインスタレーションを展開する。そこには動物の姿も認められるが、その多くが刺身や肉など、スーパーマーケットで切り分けられて売られている、かつて"動物だった"ものたちである。それらは、野菜と混交してキマイラになり、また島状に肥大化して、作品の中で跋扈する。タン・ルイの森は、日々目にする魅惑的な装飾の背後に潜む、生と食にまつわる欲望を明らかにする。

二人の作家は、"動物"というものを介して、人間を凌駕するより大きい世界と、人間が作り上げた生死と引き換えの欲望の世界を、ともに垣間見せる。板に掘った薄い面と、紙を切り抜いたコラージュ、どちらもその表面性ゆえに、この世界の表象を魅惑的かつ儚く捉えるのである。

能勢陽子(豊田市美術館学芸員)


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掲載写真/撮影|城戸 保