今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

AKI INOMATAAKI INOMATA

  • 1983年東京都生まれ。
  • 東京都拠点。

AR06

AKI INOMATAは、自然界における様々な生命の特性を観察し、ヤドカリ、ビーバー、真珠貝など人間以外の生きものと「共同で制作」した作品で知られています。本展では、有松で発展してきた絞り染めの技術と、ミノガ(箕蛾)の幼虫、ミノムシが巣をつくる技術の混淆を、久野染工場の協力を得て実現しました。有松・鳴海絞りでは、布を糸でくくり、縫い締めるなどの方法で染まらない箇所をつくり、多彩な模様を染め上げます。くくられた状態の布がミノムシの蓑に似ていると感じたINOMATAは、有松絞りの生地をミノムシに与え、蓑(巣筒)をつくってもらいました。

彼女が展示する岡家住宅は、江戸時代末期の有松の絞問屋です。この元作業場空間に、有松・鳴海絞りの美しい蓑を纏いながら葉を食べるミノムシの映像作品《彼女に布をわたしてみる》(2022)が展示されています。また、高い天窓のある空間には、有松・鳴海絞りで蓑をつくったミノムシが小枝についた状態で展示されています。有松・鳴海絞りが発展するなかで100種類以上の模様が生みだされたといわれていますが、本作には「やたら三浦絞り」「唐松絞り」「縫い筋杢目絞り」「帽子絞り」「日の出絞り」「機械蜘蛛絞り」などが使われています。

さらにINOMATAは、ミノムシが羽化した後のミノガの翅に見られる模様をモチーフに、新しい絞り染めの技法を考案しました。その模様は一般的なミノムシよりも進化的に古い種で、成虫になるとメスも蛾となり、翅をもって飛翔するキノコヒモミノガ、ヒモミノガから採られています。この新しいミノガ絞りを団扇に仕上げ、岡家の新座敷にあった箪笥などとあわせて展示しています。翅形の団扇は、あたかもミノガが翅を動かすようにして風を起こします。

人間界を超えた生命との関わりや、そこから生まれるものを探求するAKI INOMATAは、金沢21世紀美術館(2022)、北九州市立美術館(2019)、十和田市現代美術館(2019)などで個展を開催、「Broken Nature」ニューヨーク近代美術館(2021、米国)、第22回ミラノ・トリエンナーレ(2019、イタリア)に出品するなど、近年注目が高まっているアーティストのひとりです。

主な作品発表・受賞歴
2021
「Broken Nature」ニューヨーク近代美術館(米国)
2019
「AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」十和田市現代美術館(青森)
2019
「guest room 004 AKI INOMATA 相似の詩学 -異種協働のプロセスとゆらぎ」北九州市立美術館(福岡)
2019
第22回ミラノ・トリエンナーレ、トリエンナーレ・デザイン美術館(イタリア)
2018
タイ・ビエンナーレ2018(クラビ)
2018
「Aki Inomata, Why Not Hand Over a “Shelter” to Hermit Crabs?」ナント美術館(フランス)

展示情報

AR06

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《彼女に布をわたしてみる》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-17:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
水曜日
会場・アクセス
岡家住宅
  • 名鉄「有松」駅下車 徒歩5分