今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

小杉 大介Daisuke Kosugi

  • 1984年東京都生まれ。
  • オスロ(ノルウェー)拠点。

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8台のベッドが残る旧看護実習室を舞台にした、小杉大介による新作サウンド・インスタレーション《赤い森と青い雲》(2022)。ベッドに近づくと、男性と少女とその母、看護師と患者と思われる人、年配の男女、子ども同士など、様々な人物たちの対話と場景描写が抑制されたトーンで語られ、スピーカーから聞こえてきます。人の命の誕生から終焉までをケアする訓練と知識習得の場であった実習室には、どこか生死のリアリティを欠いた平板さが残存しています。ここで生死は想像によってのみ補われ、聞こえてくる音声の背後にある「語られていないもの」の気配と同期します。各病床を巡ることで、来場者は能動的な観客となり、なおかつ小杉によって他律的に振り付けられたパフォーマーにもなります。

小杉は東京の企業に勤めた後ノルウェーで芸術を学び、「痛みは(他者に)伝達可能か」という問いを、映像、彫刻、パフォーマンスを通して探求してきました。社会的な葛藤や不自由さがもたらす痛みから、トラウマと治癒、医療従事者などケアする立場の人間が被る共感疲労まで、言語化・顕在化しにくい痛みに対して芸術がどのように応答できるかを考察しています。《赤い森と青い雲》が抽象的に語るのは、画面越しに伝達される、見たいものだけ見えるように視覚テクノロジーによって操作された「データを可視化した現実」と、「生身の身体が実際に生きる現実」の間のテンションです。不可視光線で観測した衛星画像では、森は赤く、雲は青く示されることがあります。耳を澄ませると、コロナ禍の日常と新たな戦争が見え隠れするでしょう。そこでは、私たちの生のリアリティと、データやシミュレーションに覆われた世界を透視するための想像力が問われているのです。

小杉はオスロ国立芸術大学卒業後、2019年パリのジュ・ド・ポーム国立美術館での個展のほか、東京都現代美術館の「MOTアニュアル2021」、2016年韓国の光州ビエンナーレなどに参加しています。

主な作品発表・受賞歴
2022
個展「Somewhat Infrequently」大和日英基金(ロンドン、英国)
2021
「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」東京都現代美術館(日本)
2019
個展「A False Weight」ジュド・ポーム国立美術館(パリ、フランス)
2016
光州ビエンナーレ(光州、韓国)

展示情報

《赤い森と青い雲》2022

IC05

  • 国際芸術祭「あいち2022」 展示風景
  • 《赤い森と青い雲》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
旧一宮市立中央看護専門学校(5階)
  • JR「尾張一宮」駅下車 徒歩16分
  • 名鉄「名鉄一宮」駅下車 徒歩16分

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