今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

ディードリック・ブラッケンズDiedrick Brackens

  • 1989年メヒーア(米国)生まれ。
  • ロサンゼルス(米国)拠点。

AC26

ディードリック・ブラッケンズは寓意、物語、素材、色彩を探求した複雑なタペストリーでよく知られています。西アフリカの織物、ヨーロッパのタペストリー、アメリカ南部のキルティングの伝統から学んだ技術を用い、ブラッケンズは手染めの糸で大地と人物を織り上げ、叙情的な関係性を表現しています。タペストリーの制作は、コラージュしたドローイングや写真、切り抜きをスケッチし、それをデジタル化するところから始まります。デジタル化したのち、ブラッケンズは構図を決めるために要素の大きさや形を試行錯誤し、即興の余地も残すことで、織る工程でさらなる挑戦を試みます。

今回展示する作品を含む最近の作品では、痛みや死を扱った以前の物語から離れ、心地よさ、楽しみ、内面性、自然とともにあることなどの主題を探求しています。作品は歴史に重きを置いていますが、神話や民話を引用した空想的な寄り道が含まれています。《each their own》(2021)では、足を組んで床または地面に座るひとりの人物と、その側で黒椅子の上に無邪気に座るうさぎ2匹が、いずれも黄色で織られています。このうさぎは、西、中央、南アフリカや、北米先住民の口伝に由来する重要なキャラクター、「ブレア・ラビット」を思い起こさせます。たいていは単なるトリックスター(いたずら者)として認識されますが、このうさぎは人間と神話や宇宙の次元をつなぐ役割を持ったいきものとして豊かに理解されており、ここでは座ることを学ぶ人物に付き合っています。《marshling》(2021)では、蒲の群生する中で腰に手を当てた人物が堂々と立ち、3匹の大きななまずがその脚を取り囲んでいます。黒い糸で織られた人物の影は、前方を見ているのか後方を見ているのかわからず、その視線が理解されることを拒んでいます。なまずはブラッケンズの自伝的・歴史的作品を通じて創られた個人的な神話を示すもので、人が世界を渡り歩く手助けをする祖先の霊の化身を表しています。

主な作品発表・受賞歴
2021
「Diedrick Brackens: Ark of Bulrushes」スコッツデール現代美術館(米国)
2019
「Diedrick Brackens: darling divined」ニュー・ミュージアム(ニューヨーク、米国)
2017
「Diedrick Brackens: a slow reckoning」ウルリッヒ美術館(ウィチタ、米国)
  • 《summer somewhere(for Danez)》, 2020 Private collection, New York, NY.
  • © Diedrick Brackens. Courtesy of the artist, Jack Shainman Gallery, New York and Various Small Fires, Los Angeles.

展示情報

AC26

開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館ギャラリー(8F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分