今、を生き抜くアートのちから

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ガブリエル・オロスコGabriel Orozco

  • 1962年ベラクルス(メキシコ)生まれ。
  • 東京/メキシコシティ(メキシコ)拠点。

AR03

有松の竹田家住宅は、1608年(慶長13年)、東海道沿いに新たな集落を開いて有松絞りを始めた竹田庄九郎の流れをくむ商家です。なかでも、茶室「栽松庵」は徳川14代将軍・徳川家茂も立ち寄ったと伝えられる、最も歴史のある建物です。ここでガブリエル・オロスコが展示する《ロト・シャク(回転する尺)》は、日本を含む東アジアで広く使われる長さの単位「尺」に触発されたものです。「尺」は人間が人差し指と親指を広げた長さ、あるいは腕の骨の長さがもとになっていると言われ、日本では建築や和裁などの世界で未だ使われています。最も一般的な建築資材、垂木を使った《ロト・シャク》の長さは、六尺(182cm)と三尺(91cm)。茶室の畳の長さにも呼応しています。その表面には養生テープ、マスキングテープなど、工業用のカラフルなテープで幾何学的な形が描かれています。

床の間や壁にはオロスコが日本の古布を使って制作した掛け軸《オビ・スクロール》が展示され、大理石から多様な円形を掘り出した彫刻、タクシー運転手から譲り受けたインク確認用ノートパッド上のドローイングなどとあわせて配置されています。掛け軸では古布が円形や目形に切り取られ、反転されています。《ロト・シャク》や《オビ・スクロール》からタクシー運転手のドローイングまで、すべてに共通するのは回転や反転、繰り返しという動きです。禅宗では円形の書画「円相」が、始まりも終わりもない無限の宇宙を象徴するものとして描かれますが、オロスコが「栽松庵」に配した作品群もまた、それぞれの円形が回転を始め、相互に関係性を生みだし、素材や空間の歴史とも関連しながら、無限の繋がりや変化を暗示します。茶室や茶碗はしばしば独自の宇宙空間に喩えられますが、ここでもまた新たに無限の宇宙が生みだされているようです。

ガブリエル・オロスコは1990年代以降、日常的な風景のなかに文化を越えた普遍性を感じさせる作品で、世界各地に拡がった現代アートの第一線で活躍してきました。2009年にはニューヨーク近代美術館、2015年には東京都現代美術館で大規模な個展が開催されています。

主な作品発表・受賞歴
2016
個展「Gabriel Orozco」アスペン美術館(コロラド、米国)
2015
個展「ガブリエル・オロスコ展ー内なる複数のサイクル」東京都現代美術館
2009-2011
回顧展「Gabriel Orozco」ニューヨーク近代美術館(米国)/バーゼル市立美術館(スイス)/ポンピドゥー・センター(パリ、フランス)/テート・モダン(ロンドン、英国)

展示情報

AR03

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-17:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
水曜日
会場・アクセス
竹田家茶室 裁松庵
  • 名鉄「有松」駅下車 徒歩4分