今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

ホダー・アフシャールHoda Afshar

  • 1983年テヘラン(イラン)生まれ。
  • メルボルン(豪州)拠点。

AC18

南太平洋に浮かぶパプア・ニューギニアのマヌス島。《リメイン》(2018)に映し出されるのは、この島の美しい自然の姿です。しかし、その自然を背景に登場する男性たちからは、悲しみや絶望、将来への不安、死の恐怖などが語られます。彼らは難民としてオーストラリアにやってきたものの、入国を拒否されてマヌス島に抑留された人々です。

マヌス島には、2013年以降、約1500人の男性が収容されました(2016年に収容センターは閉鎖されましたが、一部の人は2021年まで島に残っていました)。島での苛酷な生活は時に「監獄」と化して彼らの心身を苛み、なかには精神を病んでしまった人や命を落としてしまった人もいます。映像のなかでは、力強く生き生きとした自然と、自由を奪われ死を身近に感じながら生きる人々との強烈なコントラストが描かれており、彼らの悲痛な叫びが歌や詩、言葉を通して私たちの耳に届きます。国外収容の結果亡くなった12人を偲んで制作されたこの映像《リメイン》は、抑留された男性たちを写した同名の12枚からなるポートレート《リメイン》(2018/2022)とともに、人間の尊厳とは何か、自由に生きる権利とは何かを私たちに問いかけているのです。

ホダー・アフシャールは、テヘラン(イラン)で生まれ、現在はメルボルン(豪州)を拠点に活動するアーティスト。彼女は、様々な事象に切り込んで見過ごされていた現実を明るみに出すというカメラの性質に着目し、写真や映像を通じてジェンダー、周縁性、移動といったテーマに取り組んできました。そこでは、ドキュメンタリーの要素と演出とを融合させることによって、ひとつの現実がいっそう鮮明に描き出されています。アフシャールの作品は、ビクトリア州立美術館(豪州)、ラホール・ビエンナーレ02(パキスタン)、サンディエゴ写真美術館(米国)などで発表されてきました。また、オーストラリアのナショナル・フォトグラフィック・ポートレート賞(2015)やボウネス写真賞(2018)を受賞しています。

主な作品発表・受賞歴
2022
「When the Wind Blows」クンストハウス・ウィーン(オーストリア)
2022
「Speak the Wind」モナッシュギャラリー(メルボルン、豪州)
2022
「PHOTO 2022」(メルボルン、豪州)
2021-2
「WE CHANGE THE WORLD」ビクトリア州立美術館(豪州)
2020
ラホール・ビエンナーレ02(パキスタン)
2019
「Defining Place/Space: Contemporary Photography from Australia」サンディエゴ写真美術館(カリフォルニア、米国)
2018
「Primavera 2018」オーストラリア現代美術館(シドニー、豪州)
2021
Ramsay Art Prize 2021 People’s Choice賞(豪州)
2015
National Photographic Portrait賞(豪州)
2018
Bowness Photography賞(豪州)

展示情報

AC18

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《リメイン》 2018
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館(10F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分