今、を生き抜くアートのちから

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石黒 健一Ishiguro Kenichi

  • 1986年神奈川県生まれ。
  • 京都府及び滋賀県拠点。

IC13

石黒健一はこれまで、歴史的主題や物質などの土地に根差した事象を扱い、それらの結節点として彫刻や映像を制作してきました。たとえば、2021年に発表した作品では、琵琶湖の外来魚であるオオクチバスと、滋賀県立美術館が所蔵するコンスタンティン・ブランクーシ作品の来歴を紐解き、現実では決して出会うことがなかった人物や生物、物質が無関係ではないということを提示しました。ここ旧一宮市立中央看護専門学校2階の教室では、一宮市本町の地蔵寺にかつて存在していた地域の象徴であったイチイガシの痕跡を3Dスキャナでデータ化。CNC工作機械を用い、水性樹脂とともに切り株を復元した彫刻、および一宮市の喫茶文化に関する映像作品を展示します。

一宮市萩原町に育った詩人・佐藤一英が、戦災を免れ、焼け野原に孤立するイチイガシに感銘を受け提唱した「樫の木文化論」も参照可能な本作は、その巨木が令和元年7月23日に文化財指定の解除を

受け、老木化のため伐採されたことに端を発したものです。1970年ごろからの産業発展に伴う公害・環境汚染により、その当時から衰弱化が確認されていたものの、近頃まで生きながらえていたその木は現在、切り株だけが残る誰の目にも止まらない風景の一部となっています。石黒は本インスタレーションを通して、自動車産業、航空宇宙、機械産業といった工業的な歴史を持つ愛知県の文脈を起点に、古木を機械的に変換。年輪の形成とは真逆の切削という作業を経て、この地に流れた不可逆的な時間の断面を作為的に再生・拡張し、100万年後の自然物と人工物の関係性に目を向けさせます。

近年の主な展示に「余の光/Light of My World」旧銀鈴ビル(2021、京都)、「Soft Territory かかわりのあわい」滋賀県立美術館(2021)、「Sustainable Sculpture」駒込倉庫(2020、東京)などがあります。また、2014年に京都と滋賀の県境に位置する「山中suplex」を共同で立ち上げ、現在も同スタジオを拠点に活動しています。

※樫の木文化論:
詩人・佐藤一英(1899–1979)が提唱した、伊勢湾や濃尾平野を「日本文化の発祥の地」とする説。

主な作品発表・受賞歴
2021
「余の光/Light of My World」旧銀鈴ビル(京都)
2021
「Soft Territory かかわりのあわい」滋賀県立美術館
2020
「Sustainable Sculpture」駒込倉庫(東京)

展示情報

《夕暮れのモーニング、二つの時のためのモニュメント》2022

IC13

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《夕暮れのモーニング、二つの時のためのモニュメント》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
旧一宮市立中央看護専門学校(2階)
  • JR「尾張一宮」駅下車 徒歩16分
  • 名鉄「名鉄一宮」駅下車 徒歩16分