今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

ヤコバス・カポーンJacobus Capone

  • 1986年パース(豪州)生まれ。
  • フリーマントル(豪州)拠点。

AC40

本作は2019年にカポーンが滋賀を訪れた際、信楽の人工林で行った6週間にわたるパフォーマンスを撮影した映像です。アーティストは冬の森に毎日のように裸足で踏み入り、スギやヒノキの一本一本に向けて手をかざし続けました。その儀式的な行為は、木々を労わっているようでもあり、どこか詫びいっているようでもあります。

人工林は主に産業用木材の効率的な生産を目的に造成されるため、多くの場合まず一定面積を伐採し、改めて同じ年齢・種類の苗を植樹するという方法がとられます。しかしこのような森は、風水害や病虫害に弱く、またスギやヒノキなどの針葉樹は果実をつけないため野生動物が食糧不足に陥るなど、様々な問題が指摘されています。カポーンは、人工的に育成された広大な森に潜む脆弱性を看取しつつも、同時にそれらの木々が人間の生活を支える建築やエネルギーに不可欠であることも知っています。厳しい自然環境にその身を晒しながら、何度も繰り返される徒労とも言える行為は、身一つでも何とか人間と自然を調停しようとする懸命な祈りでしょうか。あるいは、人間が示し得る自然との共生がいびつなものになっていることへの贖罪でしょうか。

作家は木々に向かって手を伸ばしますが、直接触れることはできません。手をかざし続けるというシンプルで内省的なパフォーマンスによって、カポーンは人間と自然とのあいだにある断絶を前景化しながら、何とか自然と折り合いをつけようとする我々の欲望をも表象しているのです。

ヤコバス・カポーンは、豪州のエディス・コーワン大学(パース)在学中に同国を徒歩で横断し、インド洋の海水を太平洋に注ぐパフォーマンス《to love》(2007)を敢行。同年にビジュアル・アートの学士を取得した後、アーティスト自身によるパフォーマンスを中心とした写真やビデオ・インスタレーションなどを制作しています。2016年には西オーストラリアの優れた現代アーティストに送られるジョン・ストリンガー賞を受賞。翌年、パース現代美術館(豪州)でのパース国際芸術祭2017の一部として、個展「Forgiving Night for Day」を開催しました。本作は、2018年に開始され現在も続く「未来への警告」プロジェクトの第2幕として制作されました。

主な作品発表・受賞歴
2020
タラワラ美術館(豪州)
2019
台北市立美術館(台湾)
2017
個展「Forgiving Night for Day」パース国際芸術祭2017、パース・インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート(豪州)
2016
John Stringer賞受賞
2014
MOMENTUM(ベルリン、ドイツ)

展示情報

《未来への警告第2幕(誠意と共生)》2019

AC40

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《未来への警告 第2幕(誠意と共生)》 2019
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館ギャラリー(8F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分