ARTISTSアーティスト
カデール・アティアKader Attia
- 1970年デュニー(フランス)生まれ。
- ベルリン(ドイツ)拠点。
AC16
事故や病気のために手足を切断した後、既にないはずの手足の痛みを感じる症状を「幻肢痛」と呼びます。本作《記憶を映して》(2016)は、幻肢痛をめぐる映像作品です。外科医や義肢装具士、精神病理の学者からミュージシャン、ダンサーなど、様々な人々のインタビューが連なり、やがて、幻肢痛の問題は、歴史的トラウマの問題へと重ね合わされます。不在の身体の一部が痛むように、辛い過去の出来事(虐殺や戦争の記憶、差別の経験)が、たとえ表面的には見えずとも、なおも人々を苦しめることについて語られます。なお、本作では、幻肢痛を軽くする方法として鏡を用いた療法が紹介されます。過去のトラウマがもたらす痛みに対しても、見えざる記憶に形を与えて映し出す(reflecting)ことが必要なのかもしれません。カデール・アティアはアルジェリア系の移民としてフランスに生まれ、フランスとアルジェリアで育ちました。その後も、スペイン、コンゴ、南アフリカ共和国など複数の国に滞在するなかで、自ずと、西洋による植民地主義や戦いの歴史、それらが社会や個人にもたらす傷に関心を抱くようになります。そして、《記憶を映して》をはじめ、「損傷と修復」を主題に作品を制作します。その作品は、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)やドイツ・カッセルのドクメンタ、韓国の光州ビエンナーレなどの国際展への出展、ベルギーのゲント現代美術館(S.M.A.K.)、英国のヘイワード・ギャラリーでの個展などを通じて世界中で高く評価されています。また、2022年のベルリン・ビエンナーレ(ドイツ)では、脱植民地主義というコンセプトのもと、キュレーターを務めています。
- 主な作品発表・受賞歴
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- 2019
- 個展「The Museum of Emotion」ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、英国)
- 2018
- 第12回光州ビエンナーレ(韓国)
- 2017
- 第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「VIVA ARTE VIVA」(イタリア)
- 2017
- 個展「Repairing the Invisible」 S.M.A.K.(ゲント、ベルギー)
- 2016
- マルセル・デュシャン賞(フランス)
- 2012
- dOCUMENTA (13)(カッセル、ドイツ)
展示情報
《記憶を映して》2016
AC16
- 開館時間
- 10:00-18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日(祝休日は除く)
- 会場・アクセス
- 愛知県美術館(10F)
- 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
- 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分