今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

ケイト・クーパーKate Cooper

  • 1984年リバプール(英国)生まれ。
  • ロンドン(英国)及びアムステルダム(オランダ)拠点。

AC24

ケイト・クーパーはリアルとバーチャルの境界を複雑化する新しい視覚言語を通して、映像が何を表象するかではなく、映像が視覚的なソマティック・エクスペリエンス(身体感覚に着目したトラウマ療法)として何をもたらすかに興味を抱いています。彼女はCGI(コンピュータ・グラフィックスによって生成されたイメージ)を使って、新しい技術やイメージが身体にいかに新しく多様にアプローチしうるかを考えさせます。近年はさらに、ニューロダイバーシティ(神経多様性)に注目しており、これはフェミニズムやクィアに関する議論など社会全体で関心が高まるダイバーシティ(多様性)にも通じるものです。

本芸術祭での新作《無題(ソマティック・エイリアシングに倣って)》では、X線画像のような身体の断片が、くっきりと像を結んだり、ぼやけたりする動きを繰り返します。コンピュータで生成されたX線画像と、収集されたフォーリーサウンド(映画やドラマで、人物の行為や周囲の現象を表現する効果音)の融合により、身体的な「アフェクト(情動)」が生み出されています。本作はスティミング(主に発達特性の強いニューロダイバージェントの身体が繰り返し行う自己刺激行動)の論理を通じて構築され、ビデオ技術を使って身体的な体験を再現し、スティムすることを試みています。クーパーはこれまで身体やイメージに関連して、ウィルスという概念やその喩えに関心を持ってきました。新作では疾病やニューロダイバースなアプローチをひとつの抵抗として捉え、それらが資本主義の生産において何を意味するのかを考えています。

タイトルにある「エイリアシング」とは、コンピュータグラッフィックスなどの分野でイメージが固定されず、動き続けることで生まれる歪みや偽信号などをさす技術用語(Temporal Aliasing)と関連しています。クーパーは「イメージが身体の代役になりつつ、新しいコピーとしての身体が動き続け、固定化されず、それ自身を盗用し、演じ続けるという意味の遊戯が好きなのです」と語っています。テクノロジーはしばしば私たちを束縛するためにも使われますが、彼女の作品は、そのテクノロジーと共に生きるオルタナティブな道を提案するものといえるでしょう。

主な作品発表・受賞歴
2021
個展「Symptom Machine」SCAD美術館(ジョージア、米国)
2021
「The Modern Exorcist」台北市立美術館(台湾)
2021
「2021 Triennial: Soft Water Hard Stone」ニュー・ミュージアム(ニューヨーク、米国)
2021
「Journey Through a Body」デュッセルドルフ美術館(ドイツ)
2020
個展「Screens Series: Kate Cooper」ニュー・ミュージアム(ニューヨーク、米国)
2020
「Antibodies」パレ・ド・トーキョー(パリ、フランス)
2019
個展「Symptom Machine」ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、英国)
2019
個展「Sensory Primer」ア・テイル・オブ・ア・タブ(ロッテルダム、オランダ)
  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《無題(ソマティック・エイリアシングに倣って)》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio

展示情報

《無題(ソマティック・エイリアシングに倣って)》2022

AC24

開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館ギャラリー(8F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分