今、を生き抜くアートのちから

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カズ・オオシロKaz Oshiro

  • 1967年沖縄県生まれ。
  • ロサンゼルス(米国)拠点。

AC15

会場の壁沿いに雑然と並べられた使い古されたアンプやキャビネット、そして年季の入ったH鋼は、一見すると何の変哲もない量産品ですが、近付いてよく見てください。これらは全てキャンバスに描かれており、カズ・オオシロによって精巧に作られたトロンプ・ルイユ(だまし絵)だとわかるでしょう。

絵画は時として、二次元平面に遠近法やキアロスクーロ(明暗法)を用いて三次元的な奥行きのある空間を生み出す「イリュージョン」であると見なされます。とりわけ戦後のアメリカでは、絵画からイリュージョンを取り除いて、本来絵画に備わっている平面性を回復していくことが肝要であるとの見方が広まっていたこともあり、多くの画家たちが抽象絵画を描きました。オオシロはこのような絵画史を引き受け、トロンプ・ルイユという典型的なイリュージョンの技法を用いながらも、遠近法や明暗で表現すべき対象を立体的に実物大で象ってしまうことで、絵画という枠組みを脱臼させ、はなからイリュージョンが生まれ得ない表面を作り出しています。

ところで、私たちはこれらを絵画と認識することで初めて、「作品」としての完成度に驚くのですが、同時に「なぜ絵画だとわかると作品として見ることができるのか?」という疑問を突きつけられます。オオシロは絵画の範疇だけでなく、作品を成立させる既存の条件にも疑念を投げかけているのです。

カズ・オオシロは、高校卒業後ロサンゼルスに渡り、カリフォルニア州立大学で1998年に文学士、2002年に美術学修士を取得。抽象表現主義やポップ・アート、ミニマリズムなど、戦後アメリカ美術の潮流を独自に解釈して展開し、「絵画」と「芸術」の本質を探っています。国内外で精力的に展示を続けており、2014年にはロサンゼルス・カウンティ美術館(米国)で個展「Chasing Ghosts」が開催されました。

主な作品発表
2014
個展「Chasing Ghosts」ロサンゼルス・カウンティ美術館(米国)

展示情報

AC15

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館(10F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分