今、を生き抜くアートのちから

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奈良 美智Nara Yoshitomo

  • 1959年青森県生まれ。
  • 栃木県拠点。

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奈良美智が描く少女たちの多くは、画面の中心に一人で立つ孤独感を漂わせながらも、その独特の表情や眼差しからは、大人の世界を成立させる制度や権力構造へ果敢に立ち向かう抵抗の意志が感じられます。奈良は愛知県立芸術大学及び大学院で学び、1988年に渡独してデュッセルドルフ美術アカデミーを修了しました。世界に広く知られるアーティストになった今日もなお、彼が世界を見つめる眼差しには、少女や犬など小さなものの内面にある孤独、怖れ、抵抗、周縁から中心を見つめる距離感といった複雑な感情が織り交ぜられています。

旧名古屋銀行一宮支店の建物を改装した「オリナス一宮」は、神々へ祈りを捧げる真清田神社への参道沿いにあります。ここで展示される《Miss Moonlight》(2020)の少女はまぶたを閉じ、奈良作品のなかでもとりわけ慈愛に満ちた表情で、静かに祈りを捧げているようにも見えます。「月光の少女」を意味するタイトルどおり、髪の毛にはこの世の様々な輝きが投影され、美しい色に溢れています。

《Fountain of Life》(2001/2022)では、頭部が重なり合った子供たちの眼から泉のように涙が溢れ出しています。留まることのない静かな涙。それは疫病や戦争に限らず、悲しみの絶えない今日の世界で、愛と平和を願う涙のようでもあります。少年時代を米軍三沢基地(現在は日米共同使用の航空作戦基地)の近くで過ごしたこともあり、世界の平和を願う奈良の姿勢は初期から多くの作品に描かれてきましたが、本展でも段ボールに描かれた近作シリーズには、反核や反戦へのメッセージが切迫感とともに込められています。

主な作品発表・受賞歴
2020-2022
個展「Yoshitomo Nara」ロサンジェルスカウンティー美術館(米国)/余德耀美術館(上海、中国)/国立台湾美術館
2021-2022
個展「奈良美智特展」関渡美術館 (台北)/高雄市立美術館/台南市美術館(台湾)
2021
個展「Yoshitomo Nara: I Forgot Their Names and Often Can’t Remember Their Faces but Remember Their Voices Well」ダラス・コンテンポラリー(米国)
2017
個展「奈良美智 for better or worse」豊田市美術館(愛知)
2013
芸術選奨文部科学大臣賞受賞
2010
ニューヨーク国際センター賞受賞

展示情報

IC01

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《Fountain of Life》 2001/2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
オリナス一宮
  • JR「尾張一宮」駅下車 徒歩8分
  • 名鉄「名鉄一宮」駅下車 徒歩8分