今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

尾花 賢一Obana Kenichi

  • 1981年群馬県生まれ。
  • 秋田県拠点。

TK11

人々の営みや、伝承、土地の風景・歴史から生成したドローイングや彫刻を制作し、虚構と現実を往来しながら物語を紡いでいく尾花賢一。

劇画調で描かれたそのストーリーに、起承転結のようなドラマチックな展開はないものの、尾花はこの世に広がる矛盾や不条理をあぶり出そうとする作品を数多く生み出してきました。なかでも、カラフルな覆面を被るキャラクターは、匿名の象徴として作品内に度々登場し、ストーリーテラーのように物語を導きます。本展示では、この地に生まれ、暮らす「イチジク男」を起点に、個人の歴史と常滑市の歴史が重なり合いながら進んでいくインスタレーションを提示します。

かつて急須の原型をつくる店舗だったこの空間では、半年に及ぶ常滑でのリサーチを経てつくられたモビールやドローイングが並んでいます。またそれらと同様に、脈絡もなく雑然と堆積したモノたちや、まるで誰かが休むためのような小部屋、農作業をするための道具なども目に入るはずです。それらは各作品とともに尾花によって再配置されたものですが、一方でこの場所が現役の作業場であるということを示しています。さらに、この建物の向かいにある小屋は、かつて「イチジク男」の母が鮮魚を販売していた商店だったといいます。尾花は、こうした無数の事柄を回収しつつも、ただそれを視覚化することにだけにとどまらず、個別のエピソードを普遍化しようと試みます。観賞者が自己を投影できる「余白」や「隙間」を設けることにより、やがて忘却されるだろう膨大な物語たちをいかに現代に蘇らせられるのか検証しているのです。

尾花の近年の主な展示に「200年をたがやす」秋田市文化創造館(2021)、奥能登国際芸術祭2020+(2021、石川)、「VOCA展2021」上野の森美術館(2021、東京)、「表現の生態系 世界との関係をつくりかえる」アーツ前橋(2019、群馬)などがあります。また、「VOCA展2021」ではVOCA賞を受賞しています。

主な作品発表・受賞歴
2021
「200年をたがやす」秋田市文化創造館
2021
奥能登国際芸術祭2020+(石川)
2021
「VOCA展2021」上野の森美術館(東京)、VOCA賞受賞
2019
「表現の生態系 世界との関係をつくりかえる」アーツ前橋(群馬)

展示情報

《イチジクの小屋》2022

TK11

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《イチジクの小屋》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-17:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
水曜日
会場・アクセス
旧急須店舗・旧鮮魚店
  • 名鉄「常滑」駅下車 徒歩9分