今、を生き抜くアートのちから

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大泉 和文Oizumi Kazufumi

  • 1964年宮城県生まれ。
  • 愛知県拠点。

AC21

白い大理石が印象的な愛知県美術館のロビーには、モニュメンタルな《可動橋/BH 5.0》が設置されました。空間に呼応した白と無色透明とシルバーを基調色とし、高さ約0.7mのステージと長さ4mの橋桁から成るこのミニマルで無機質な跳ね橋からは、一時間あたり6回、橋桁が降りてきます。偶然その機会に居合わせ、高さに躊躇せず足を踏み出そうと心を決めた人だけが、橋を渡ることができます。その人は自ずと観客からパフォーマーへと変容します。

「可動橋」は大泉和文が2018年以来継続しているシリーズで、5作目となる本作は過去最大。動きのダイナミズム、メカニズムの複雑さ、そして荘厳さが増した一方、作品が写像する世界の混沌と危機的状況もより複雑化しています。大泉は20代半ばに冷戦構造の終結を目の当たりにしました。その後、時代の変遷を経てもなお、「橋」が暗喩する境界、分断、距離、相違、対立などが解消されない世界の様相を本シリーズは反映しています。彼は芸術の役割として、分断をつなぐコンセプチュアルな(概念としての)橋をつくり続け、他者とともに生きるための想像力を喚起しようと試みています。

大泉は、筑波大学芸術専門学群の授業で、かつてCTG(コンピュータ・テクニック・グループ/1966–1969)を結成した幸村真佐男に学んだことが転機となり「コンピュータに任せ自分で描かない絵画」に表現の可能性を見出しました。1991年以降、アンビルト建築の三次元CGによる再現と併行して、オートマティック・ドローイング・マシンなど物理的に動く作品や、大規模なインタラクティブ・インスタレーションを制作。美術家のセンスを設計に活かしながら、素材の機械加工まで自ら行います。名古屋のStanding Pineでの個展や、メディアアートの祭典として知られるリンツ(オーストリア)の「アルスエレクトロニカ・フェスティバル2019」などにも参加。CTGの研究者として単著を上梓しています。

主な作品発表・受賞歴
2020
個展、Standing Pine(愛知)
2019
個展、N-Mark 5G(愛知)
アルスエレクトロニカ・フェスティバル2019(リンツ、オーストリア)
2018
個展、N-Mark 5G(愛知)
2007
神戸ビエンナーレ 2007(兵庫)

展示情報

《可動橋/BH 5.0》2022

AC21

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《可動橋/BH 5.0》 2022
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館(10F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分