シュエウッモンは身近な人々を主な被写体とし、ケアやフェミニズムの観点から社会の一端を切り取ってきた写真家です。彼女の暮らすミャンマーは、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、国軍によるクーデターにより、2020年以降に状況が一変しました。社会不安が高まり、彼女と彼女の家族も大きな影響を受けます。とりわけ、シュエウッモンの妹であり芸術家でもあるチーチーターは、統合失調症に陥りました。ここに展示されているのは、シュエウッモンと妹のチーチーターがこうした環境の中で、ともに作り上げた作品です。

壁には、シュエウッモンが撮影した家族や身近な風景のモノクロ写真と、彼女の写真にチーチーターが絵具で色を加えたものが並んでいます。また中央には、シュエウッモンにならってチーチーターが撮影した色鮮やかなスナップ写真が展示されています。どれも彼女たちの親密な信頼関係のうえにつくられたもので、写真と絵画の創造的なセッションとなっています。これらの作品は、ミャンマーの閉塞感に満ちた社会状況の記録であると同時に、あくまで彼女たち姉妹の私的な生活の一側面となっており、非常に繊細な空気感に満ちています。

シュエウッモンは国際連合の機関やNGOのリサーチャーとして活動しつつ、写真家としても作品発表を続けてきました。彼女の作品は、シンガポールのオブジェクティフス・ドキュメンタリー・アワード2020（オープン・カテゴリー）や、ジュリアス・ベア・ネクスト・ジェネレーション・アート・プライズに入賞しています。また、ミャンマー、タイ、バングラデシュ、インド、スイスなど、世界各地のアートスペースや芸術祭でも作品が紹介されています。

主な作品発表・受賞歴

2022

「A Bell Rings Across The Valley」 Roslyn Smorgon Gallery, Footscray Community Arts（メルボルン、豪州）

2021

ジュリアス・ベア・ネクスト・ジェネレーション・アート・プライズ入賞

2021

個展「Noise And Cloud And Us」The Objectifs Centre for Photography and Film（シンガポール）

2020

オブジェクティフ・ドキュメンタリー・アワード2020（オープン・カテゴリー）入賞

2020

シンガポール国際写真フェスティバル（シンガポール）

2020

「Knots Photo Exhibition」Myanmar Deitta Gallery（ヤンゴン、ミャンマー）

2020

「Meet the Artists: Shwe Wutt Hmon und Yu Yu Myint Than」Villa Sträuli（ヴィンタートゥール、スイス）

2019

「Disclosure」（Thuma Collectiveのグループ展）Myanmar Deitta Gallery（ヤンゴン、ミャンマー）

2019

「Bridging The Naf」Myanmar Deitta Gallery（ヤンゴン、ミャンマー）

2018

「Us & Beyond」（Thuma Collectiveのグループ展）Myanmar Deitta Gallery（ヤンゴン、ミャンマー）

展示情報

• 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
• 《雑音と曇りと私たち》 2020-2022
• 撮影： ToLoLo studio