今、を生き抜くアートのちから

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シアスター・ゲイツTheaster Gates

  • 1973年シカゴ(米国)生まれ。
  • シカゴ(米国)拠点。

TK05

旧丸利陶管の住宅は、約5年前から休眠状態にありました。2階にみられる中央の高い船底天井は、家主が裕福であったことを物語ります。アーティスト、ソーシャル・イノベーターのシアスター・ゲイツは、この住宅を、音楽、ウェルネス、陶芸研究のためのプラットフォーム「ザ・リスニング・ハウス」に生まれ変わらせました。

思想家、制作者、建造者たるゲイツは、変化の仲介者としてのアーティストの役割を拡張するような活動で知られます。そのパフォーマティブな実践や視覚芸術の根底には、黒人社会の知識、歴史、アーカイブがあります。彫刻、陶芸、都市計画を学んだ彼は、シカゴ市サウスサイド地区で地域の建築家、住宅局、不動産会社と協力し、地域活性化に貢献したプロジェクトで高く評価されています。

日本各地でのリサーチや作家との出会いを通して常滑に関心を持ち続けていたゲイツは、2004年、海外の陶芸家が地域の人々やつくり手と交流するプログラム「とこなめ国際やきものホームステイ(IWCAT)」に参加し、初めて常滑に滞在。以降もこの地を訪れてきました。彼にとって陶芸は、自分の手と想像力だけで世界を新しく形づくる表現であり、その考え方は他の活動にも通底します。

近年取り組む「アフロ民藝」は、日本の哲学とブラックアイデンティティを融合させ、文化的混成の可能性を探るものです。常滑の陶芸文化にブラックカルチャーを融合させる「ザ・リスニング・ハウス」もこの考え方に基づき、スタジオ、ワークショップ、音楽イベントの場として会期中機能します。

展示されるブラック・ソウルミュージックやエクスペリメンタル・ジャズのレコードは、亡き友人の陶芸家マルヴァ・ジョリー(1937–2012)から譲り受けたもので、「ザ・リスニング・ハウス」の中核をなします。このプロジェクトは彼女への賛辞であり、ブラック・ミュージックと陶芸の歴史を讃えるものでもあります。また、かつてシカゴにあったジョンソン出版社がアフリカ系アメリカ人の文化を紹介した雑誌のイメージや、ネオンによる彫刻も展示されます。後者は画家アグネス・マーティンの作品や、20世紀初頭のアフリカ系アメリカ人の経験を視覚化したW.E.B デュボイスの統計図表から着想されたものです。

ゲイツにとってこのプロジェクトは、アーティストたちの間に生まれる多様な関係性を表現する試みです。「ジョリーが遺したコレクションによって明らかになる我々の真の友情は、常滑が私にくれた友情ともつながります。私は自分の第二の故郷・常滑に恩返しがしたいと常々思ってきました。今回の取り組みはその始まりです」

主な作品発表・受賞歴
2021
王立英国建築家協会名誉研究員
2020
第26回クリスタル賞(スイス)
2018
J.C. Nichols Prize for Visionaries in Urban Development(米国)
2018
ナッシャー彫刻賞(米国)
2018
クルト・シュヴィッタース賞(ドイツ)
2015
アルテス・ムンディ賞6(ウェールズ、UK)
  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 「ザ・リスニング・ハウス」 2022
  • 撮影: ToLoLo studio

展示情報

「ザ・リスニング・ハウス」2022

TK05

開館時間
10:00-17:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
水曜日
会場・アクセス
旧丸利陶管
  • 名鉄「常滑」駅下車 徒歩7分