今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)Watanabe Atsushi (Iʼm here project)

  • 1978年神奈川県生まれ。
  • 神奈川県拠点。

AC42

社会の中でタブーや穢れとして扱われかねない問題や存在を、その当事者たちとの協働を通じて顕在化させてきたアーティスト、渡辺篤。彼は2009年に東京藝術大学大学院を卒業後、足掛け3年にわたるひきこもりを経験しました。その体験を基点に、社会のなかで生きづらさを抱える人々、孤独や孤立の立場にある人々との協働制作を行うプラットフォームとして「アイムヒアプロジェクト」を主宰しています。同プロジェクトはR16 studio(神奈川)、「TURNフェス6」(東京都美術館)、瀬戸内国際芸術祭2022などでも継続的に展開され、社会への問題提起を続けています。横浜にスタジオを構え活動する渡辺は、2020年度横浜文化賞 文化・芸術奨励賞を受賞しています。

不揃いに輝く無数の月の写真から成る巨大なライトボックス《YourMoon》(2021)。この作品を構成する月の写真は、2020年4月に発令された緊急事態宣言の直後「孤立感を感じていること」という条件で集まった匿名の人々が、渡辺から送付されたスマホ用の小型望遠鏡を使って撮影したものです。コロナ禍で外出できない人、持続的孤立状態にあるひきこもりや心身の障害を持つ人、シングルマザー、自死遺族など、様々な背景を抱えた人たちが、それぞれの居場所から同じ月を見上げました。一方、同じ空間に吊り下げられた球体の照明作品《ここに居ない人の灯り》(2021)は、どこか遠く離れた場所からの参加者によって操作されているといいます。これら一連のプロジェクト「同じ月を見た日」は、自らの孤独と他者の孤立に思いを馳せ、その存在を想像することで、孤独をベースとした柔らかな連帯を生み出します。河原温の「I AM STILL ALIVE/私はいまだ生きている」から半世紀を経た今発せられる「IʼM HERE/私はここにいる」というメッセージは、孤独を抱えたすべての者たちの切実な声であり、生きるための連帯の表明として響くはずです。

主な作品発表・受賞歴
2021
「同じ月を見た日」R16 studio(神奈川)
2020
「修復のモニュメント」BankART SILK(神奈川)
2020
「Looking for Another Family」国立現代美術館(ソウル、韓国)
2020
横浜文化賞文化・芸術奨励賞受賞

展示情報

AC42

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-18:00(金曜日は20:00まで)

※入館は閉館の30分前まで

休館日
月曜日(祝休日は除く)
会場・アクセス
愛知県美術館ギャラリー(8F)
  • 東山線または名城線「栄」駅下車 徒歩3分
  • 瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩3分