今、を生き抜くアートのちから

ARTISTSアーティスト

ユキ・キハラYuki Kihara

  • 1975年アピア(サモア)生まれ。
  • アピア(サモア)拠点。

AR05

展示されている着物5点は、開催中の第59回ヴェネチア・ビエンナーレニュージーランド代表に選出され、世界の注目を集めるユキ・キハラの5年に及ぶプロジェクトの第2章《サーモアのうた- Fanua(大地)》(2021)です。突き当りに掛かっているひと昔前の簡素な着物と、晴着を着た男女の写真は、彼女の祖母の着物と祖父母の写真です。

カジノキの内側の繊維からつくられる布を用いたサモアの伝統的なテキスタイル「シアポ」と振袖の文化的特色が融合した《サーモアのうた》は、日本人の父とサモア人の母をもつユキ・キハラのアイデンティティを物語ります。本作の着想源となった『サモア島の歌』は、1950年代後半、NHKがサモアで現地の子どもたちが歌い踊る様子を撮影したことがきっかけで生まれたとされる、日本でもよく知られた曲です。サモアをエキゾチックに典型化した歌詞にキハラは衝撃を受けたと語ります。

サモア最古の伝統工芸のひとつであるシアポに、現代のサモアが直面する文化、環境、社会経済の諸問題が描かれ、表面に手作業で繊細なビーズ装飾が施された《サーモアのうた》は、複数の職人とキハラ自身の家族の手による制作過程においても、サモアに根差す共同社会のあり方が窺えます。グローバル化した資本主義経済のサモアに及ぼす影響が、シアポの着物をキャンバスとした連作の構図と呼応して、ダイナミックに描き出されています。伝統の継承と革新、グローバルな資本経済がローカルに及ぼす影響など、《サーモアのうた》は地域の生存に付随するジレンマとして私たちにも響くことでしょう。

主な作品発表・受賞歴
2022
第59回ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)
2018
バンコク・アート・ビエンナーレ(タイ)
2017
ホノルル・ビエンナーレ(ハワイ)
2013
個展「Undressing the Pacific: Mid-Career Survey」オタゴ大学(ニュージーランド)、他
2013
Sakahàn Quinquennial(オタワ、カナダ)
2008
個展「Living Photographs」メトロポリタン美術館(ニューヨーク、米国)
2002 & 2015
アジア・パシフィック・トリエンナーレ(ブリスベン、豪州)

展示情報

AR05

  • 国際芸術祭「あいち2022」展示風景
  • 《サーモアのうた- Fanua(大地)》 2021
  • 撮影: ToLoLo studio
開館時間
10:00-17:00

※入館は閉館の15分前まで

休館日
水曜日
会場・アクセス
岡家住宅
  • 名鉄「有松」駅下車 徒歩5分