展示・公演等
バーシム・アル・シャーケル
Bassim Al Shaker
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- バーシム・アル・シャーケル
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
天井から吊り下げられたバーシム・アル・シャーケルの《スカイ・レボリューション》は、2003年のイラク戦争での爆撃直後に目撃した光景を描いた〈4分間〉シリーズの一作品です。大聖堂などの巨大な天井画を彷彿とさせ、下から絵を見上げると空爆の際の空が迫ってくるようです。空、大気、頭上に飛び散る瓦礫、そして耳をつんざくような爆音とともに、一瞬凍りついたような奇妙な静けさが彼の記憶に刻み込まれました。
10代から故郷の激動の時代を生き抜いてきたアル・シャーケルの作品は、個人的な体験に基づきながら、描かれているのは集団的な無意識に刻まれた景色であり、またイラクの近代史を見つめるメディアでもあるのです。「これらの絵が描いているのは死ではない。爆弾でもない。爆発のあとの刹那だ。すべての絵が新しい始まりを示唆している。死は存在するが、私は新たな人生を得た。私は、まだ生きている。」という彼の言葉が示すように、その絵には破壊や喪失と同時に未来への希望や生きていることの喜びが描かれています。
新たに制作された《新たな誕生》、《空の寓話》および小型の10作品には、これまでより鮮やかで明るい色彩が用いられています。描かれた花々は、爆風に飛ぶ最後の生の瞬間のようでもあり、あるいはささやかに力強く咲き続ける姿のようでもあり、まさに「灰と薔薇のあいまに」というテーマを体現し、刹那を生きる命の儚さと尊さを強く感じさせます。
会場
愛知芸術文化センター 10F
愛知県美術館
プロフィール
- 1986年バグダッド(イラク)生まれ。ニューヨーク(米国)拠点。
バーシム・アル・シャーケルは、2013年のヴェネチア・ビエンナーレでイラク館代表のアーティストのひとりに選ばれて以来、自身のルーツやアイデンティティを伝え、イラクの近代史を振り返る作品を発表してきた。複数の絵で構成される作品《Four Minutes》が描いているのは、米国が2003年にイラクを侵攻した際、アル・シャーケルが目撃した爆発の光景である。爆発の直後に見えた空、大気、頭上を飛び交う瓦礫、完全なる静寂。一連の絵にインスピレーションを与えたのは、このトラウマ的な体験のほんの一部にすぎないが、彼は観客に「これらの絵が描いているのは死ではない。爆弾でもない。爆発のあとの刹那だ。すべての絵が新しい始まりを示唆している。死は存在するが、私は新たな人生を得た。私は、まだ生きている。」と語りかける。その絵から横溢するエネルギーには、逆境から回復する力と、生への感謝の念が見て取れる。幾層にも重ねられた豊かな色彩、激しく交差する筆致がキャンバスに息を吹き込んでいる。
- 主な発表歴
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- 2024
- アート・バーゼル・マイアミ、マイアミ・ビーチ・コンベンション・センター(米国)
- 2024
- エキスポ・シカゴ、ネイビー・ピアーズ・フェスティバル・ホール(米国)
- 2023
- 個展「Four Minutes」ローナ・ホフマン・ギャラリー(シカゴ、米国)
- 2022
- ドクメンタ15(カッセル、ドイツ)
- 2013
- 第55回ヴェネチア・ビエンナーレ、イラク館(イタリア)
- 《Sky Revolution》 2023