展示・公演等
川辺ナホ
Kawabe Naho
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- 川辺ナホ《INSULA(島)》2025
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
INSULA(島)
川辺ナホは、日本の近代化を支えた石炭の主要産地である福岡県で生まれ育ちました。武蔵野美術大学映像学科を卒業後、2001年にドイツへ留学。現在はドイツと福岡を行き来しながら活動しています。川辺は、文明の発展に大きく影響を及ぼした炭鉱やエネルギー産業に関心を寄せながら、福岡やドイツの産業史、地理的な固有性を綿密に調査したインスタレーションやドローイングなどを発表してきました。その作品は、「炭」や植物を原材料とする「木炭」を象徴的に用いながら、まるで演劇の一場面のようなドラマティックな空間をつくりあげ、鑑賞者の身体に訴えかけるのが特徴です。
本作は、近代以降のエネルギー産業の要である送配電の技術に欠かせない「碍子」に川辺が注目したことから始まります。20世紀初頭、日本の街中に電柱が立ち始めた頃、高電圧にも耐えうる磁器製の碍子が愛知で開発され、日本全国の送配電網に貢献しました。この碍子製造を可能にした技術は、日本の磁器製洋食器の開発とも密接に関わっています。川辺はこのような歴史を下敷きに、碍子と炭、電線や日用品を用いて、先史時代から今日まで続く人類と炭の関係性を、有機的に表現しました。植物を元にする炭が花柄の布のように床にひろげられ、そこから電線でつくられた立体物が立ち上がります。まるで炭が形成した「黒い花畑」から生まれ育ち、複雑に変容し続けるエネルギーの姿のようです。本作は、炭素をめぐる今日的な環境問題にも接続し、地球の未来に対して私たちがどのように向き合うべきなのか、問いかけているようです。
会場
愛知芸術文化センター 10F
愛知県美術館
プロフィール
- 1976年福岡県生まれ。ハンブルク(ドイツ)、福岡県拠点。
川辺ナホは、映像、インスタレーション、立体、ドローイング、出版物、あるいはこれらを組み合わせた作品を制作する、学際的な思考を持つアーティスト。川辺の実践においては、「炭」というマテリアルに焦点を当てた社会的、文化的、歴史的なリサーチの結果が、現代の社会構造を見直そうとする試みという点で、個人的な経験と重なり合っている。近年は炭鉱についてのリサーチをベースに、エネルギー産業と移動する人や物質をテーマとした制作を行っている。武蔵野美術大学映像学科卒業後、2001年にDAADの奨学金を受けドイツへ留学し、現在は日本とドイツを行き来しながら活動を行っている。
- 主な発表歴
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- 2024
- 「ルール炭田の日本人:越境者たち」ケルン日本文化会館(ドイツ)
- 2019
- 「Fuzzy Dark Spot. Videoart from Hamburg」ファルケンベルク・コレクション/ダイヒトールハーレン・ハンブルク(ドイツ)
- 2019
- 個展「Blooming Black」OCT Boxes Art Museum(広州、中国)
- 2014
- 「想像しなおし」福岡市美術館
- 2011
- 「Archive und Geschichte(n)」ハンブルク美術館(ドイツ)
- 《In Search of Utopia - Et in Arcadia ego》(部分) 2024
- Photo: 川崎一徳