今、を生き抜くアートのちから

LEARNINGラーニング

「芸術祭」をひも解く:近代化と万博‑オリンピック‑芸術祭

「芸術祭」にもつながる万博やオリンピックといった大規模な国際イベントを概観していくことで、「芸術祭」を歴史的、批評的に捉えました。社会学や都市論、歴史学など多ジャンルの専門家によるレクチャーを通して、「芸術祭」のあり方について考えました。

第1回 吉見俊哉

  • 2021年8月22日(日)
ゲスト
吉見俊哉(社会学者)

2004年より東京大学大学院情報学環教授。主たる専攻は社会学、都市論、メディア論、文化研究。演劇論的なアプローチを基礎に、日本におけるカルチュラル・スタディーズの中心的な存在として先駆的な役割を果たしてきた。主な著作に、『都市のドラマトゥルギー』(弘文堂、1987年、河出文庫、2008年)、『万博幻想』(ちくま新書、2005年、講談社学術文庫、2011年)、『大学とは何か』(岩波新書、2011年)、『五輪と戦後:上演としての東京オリンピック』(河出書房新社 2020年)等多数。

2005年愛知万博の「海上の森」保全問題にも関わってきた経験を踏まえ、五輪と万博、そして芸術祭について、経緯、問題点をひも解いていきました。このレクチャーは愛知県の教職員や美術教育関係者を対象にした「サマー・スクール」のレクチャーの一つとしても実施しました。

「芸術祭」をひも解く1 ゲスト:吉見俊哉

第2回 辻󠄀田真佐憲

  • 2021年11月7日(日)
ゲスト
辻󠄀田真佐憲(評論家・近現代史研究者)

1984年、大阪府生まれ。評論家・近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院文学研究科中退。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなどを幅広く手がけている。単著に『超空気支配社会』『古関裕而の昭和史』『文部省の研究』(文春新書)、『天皇のお言葉』『大本営発表』『ふしぎな君が代』『日本の軍歌』(幻冬舎新書)、『空気の検閲』(光文社新書)、『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)、共著に『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社)、『新プロパガンダ論』(ゲンロン)などがある。監修に『満洲帝国ビジュアル大全』(洋泉社)など多数。軍事史学会正会員、日本文藝家協会会員。

「中間」を見直すことと、実践を繰り返していくことの二つを軸に展開しました。一年後に迫った「あいち2022」をはじめ、これからの芸術祭のあり方、そして過去の芸術祭の姿について、レクチャーと二人のラーニング・キュレーターを交えた鼎談形式の意見交換によって、思考を広げ深めました。

「芸術祭」をひも解く2 ゲスト:辻󠄀田真佐憲

第3回 アイゼア・バルセニーラ

  • 2022年1月15日(土)
ゲスト
アイゼア・バルセニーラ(キュレーター・批評家)

ロンドン大学ゴールドスミス校(英国)美術学修士(キュレーション)。バスク大学(ビクトリア、スペイン)博士(美術史)。
ジェンダーの視点から見た博物館学、キュレーション、および現代美術を研究範囲とし、アートと人びととの出会いや視線の構築による対話の生まれ方に着目。女性アーティストを歴史化する際における展覧会の役割を分析し、「半透明の戦略」というコンセプトを通して、視線と弱者の表現について考察してきた。また、一般市民の組織化や、フェミニスト経済学から文化的実践を考察するための手法を研究する。I+Dプロジェクト「Desorientados.Territorios del género en la creación artística contemporánea(方向感の喪失。現代美術におけるジェンダー・テリトリー)」の共同代表を務める。「Baginen Bagara」展(2021年-現在開催中、Garazi Ansaと共に担当)サン・テルモ美術館(スペイン)など、数多くの展覧会にてキュレーションを手掛ける。また、『ベリア』紙や、バスク・ラジオの「アマラウナ」プログラムに芸術批評を寄せる。

芸術祭がもたらす社会的影響を見つめ直し、芸術祭自体の意義や目的意識について考えました。スペインとドイツでの事例を中心に、芸術祭の現状や背景を確認し、改めて芸術祭の目的をどのように設定できるのかということと、芸術祭を考えていくうえで自覚すべき問いかけを整理し、日本ひいては愛知の芸術祭を考えるための視座を得ました。

「芸術祭」をひも解く3 ゲスト:アイゼア・バルセニーラ