今、を生き抜くアートのちから

LEARNINGラーニング

ボランティア・プログラム

研修を通じて「対話型鑑賞」の手法を学んだボランティアが、来場者と対話的な鑑賞の機会を創出しました。また、「会場運営」や「ガイドツアー」など様々な活動を通して芸術祭を支えました。

会場運営ボランティア
会場にて作品の看視や会場案内などを主に行いました。10代から80代の幅広い世代の方が活動しました。
対話型鑑賞ボランティア
対話型鑑賞ボランティアは、「ASK ME ANYTHING 気軽にお声がけ下さい」と書かれたTシャツを着て、毎日各会場で活動しました。
ガイドツアーボランティア
事前に選考試験を受け専門性を高めるための研修を重ね、会期中に開催されるガイドツアーを担いました。

ボランティア研修

[ボランティア概要]

募集期間
第1次募集:2021年12月1日(水)~2022年3月4日(金)
第2次募集:2022年3月14日(月)〜2022年4月30日(土)
申し込み区分
【会場運営】
会場での「展示作品の看視」、「受付」、「会場案内・誘導」の補助など
【対話型鑑賞】
今回の「あいち2022」で新設した区分。会場での対話型鑑賞の手法を用いた来場者の鑑賞サポートなど

【ガイドツアー】
一般来場者を対象としたツアー形式による展示作品の案内や、学校を始めとした団体向けのガイダンスの実施など
活動場所
愛知芸術文化センター・一宮会場・常滑会場・有松(名古屋市)会場
登録者数
983名

[研修について]

〇全体研修(ボランティア登録者は全員参加)

キュレーターによる作家・作品解説や基本的な対話型鑑賞の説明、体験型の研修を行いました。

第1回 国際芸術祭「あいち2022」の開催概要説明及び今後の活動内容などについてのオリエンテーション
第2回各キュレーターによるプログラムの説明
第3回ボランティア全員に配布するボランティア手帳を確認しながらボランティア活動の説明と車椅子研修、各会場の下見研修

〇選択研修(希望者のみ参加)

対話型鑑賞のワークショップを実施しました。ボランティア登録者はだれでも参加可能。
会田キュレーターによる対話型鑑賞の基礎的レクチャーや、4人1グループになり、「あいち2022」参加アーティストの過去作品を用いて、対話型鑑賞のロールプレイングを行いました。
※対話型鑑賞とは、解説員による一方的な作品解説とは異なり、ファシリテーターのナビゲーションにより鑑賞者同士の対話を軸に鑑賞を進めていく鑑賞の方法。

〇専門研修(ガイドツアーボランティアのみ参加)

第1回

  • 会田キュレーターによるレクチャー
  • 対話型鑑賞のトレーニング
    実際のガイドツアーを想定し、グループに分かれて10人の鑑賞者とともに、「あいち2022」参加アーティストの過去作品を用いて、対話型鑑賞のロールプレイを行いました。

第2回

  • 会田キュレーターによるレクチャー
  • 対話型鑑賞のトレーニング
    第1回同様、実際のガイドツアーを想定し、グループに分かれて10人の鑑賞者とともに、「あいち2022」参加アーティストの過去作品を用いて、対話型鑑賞のロールプレイを行いました。

第3回

  • 会田キュレーターによるレクチャー
  • ガイドツアープランの共有
    実際に展示されている作品を見ることはできませんでしたが、会場内で配られるガイドマップや作品解説を読み、各自3つの作品を巡るツアーを1人で考え、タイトルを決めました。その後、3人1グループになり、考えたツアープランの共有やフィードバックを繰り返し行いました。

第4回

  • 会田キュレーターによるレクチャー
  • ガイドツアープランの共有
    開幕後の「あいち2022」を実際に鑑賞したことを踏まえて、ツアープランを共有しました。そして、各グループでフィードバックを行いました。

[研修実績]

行事名 開催日 会場
全体研修 第1回
※※
3月18日(金) 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
3月19日(土) 【一宮】
一宮スポーツ文化センター 小ホール
3月20日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【常滑】
常滑市中央公民館 視聴覚室
第2回
※※
6月17日(金) 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
6月18日(土) 【一宮】
一宮スポーツ文化センター 小ホール
6月19日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【常滑】
常滑市中央公民館 視聴覚室
第3回 7月15日(金)※ 【名古屋】
愛知芸術文化センター アートスペースA
7月16日(土)※ 【名古屋】
愛知芸術文化センター アートスペースA
【一宮】
一宮スポーツ文化センター 小ホール
7月17日(日)※ 【常滑】
常滑市中央公民館 視聴覚室
選択研修 第1回 4月8日(金)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【名古屋】
アートラボあいち
4月9日(土)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
4月10日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第2回 4月22日(金)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【名古屋】
アートラボあいち
4月23日(土)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
4月24日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第3回 5月13日(金)※ 【名古屋】
愛知芸術文化センター アートスペースA
【名古屋】
アートラボあいち
5月14日(土)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
5月15日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第4回 5月27日(金)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【名古屋】
アートラボあいち
5月28日(土)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
5月29日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第5回 6月10日(金)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
【名古屋】
アートラボあいち
6月11日(土)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
6月12日(日)※ 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
専門研修 第1回 7月3日(日) 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第2回 7月10日(日) 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第3回 7月24日(日) 【名古屋】
愛知県図書館 大会議室
第4回 8月14日(日) 【名古屋】
愛知芸術文化センター アートスペースA

 ※1日2回開催
※※後日オンラインで視聴可能

ボランティア活動

会場運営ボランティア

会場にて作品の看視や会場案内などを主に行いました。10代から80代の幅広い世代の方が活動しました。

  • 撮影: あい撮りカメラ部 竹内久生(2点とも)
対話型鑑賞ボランティア

今回の「あいち2022」で新設した区分。対話型鑑賞ボランティアは、「ASK ME ANYTHING 気軽にお声がけ下さい」と書かれたTシャツを着て、毎日各会場で活動しました。そして、来場者と作品を観ながら「何に見えますか?」など対話を重ねました。

  • 撮影: あい撮りカメラ部 竹内久生(2点とも)
ガイドツアーボランティア

週末に行われたガイドツアーや各種の鑑賞プログラム(視聴覚に障害がある人や日本語が母国語でない人、小さいお子さんがいる人、小中高生へ向けたツアー)を自らコンセプトを組み実施しました。ガイドツアーボランティアは選考を行っており、1次選考は、美術史・現代美術・国際芸術祭に関する基本知識を問う筆記試験、2次選考では、選択研修で鑑賞した作品から対話型鑑賞のロールプレイを行いました。合格した方には、ガイドツアーの専門研修や、視聴覚障害者の方とツアーを行うための事前研修、各会場の下見などを行いました。

  • 撮影: あい撮りカメラ部 竹内久生(左)
1次選考
現代アートを中心とした選択問題(オンラインで実施)
参加者数|110名
合格者数|74名
2次選考
10名程度のグループで対話型鑑賞を行う実技試験
参加者数|73名
合格者数|61名
ガイドツアーボランティア活動人数
60名
〇事前研修

視聴覚障害のある人とガイドツアーを行うための事前研修を行いました。

  • 筆談ツアー(2022年7月23日(土))
    講師|NPO法人愛知県難聴・中途失聴者協会
  • みえない・みえづらい方のためのツアー(2022年7月23日(土)、8月26日(金))
    講師|社会福祉法人名古屋ライトハウス 情報文化センター

ボランティアによる振り返り

「あいち2022」では来場者と対話をしながら作品鑑賞を深める役割として「対話型鑑賞ボランティア」を新設しました。
この「対話型鑑賞ボランティア」として活動した方のなかから9名の方にアンケートを実施し、ボランティア活動をするうえで工夫した点や活動後に自分に起こった変化などを聴きました。

  • 撮影: あい撮りカメラ部 みずのあきひこ
◎国際芸術祭「あいち」を含むあいちトリエンナーレでのボランティア経験はありますか?
  • あいちトリエンナーレ2019, 国際芸術祭「あいち2022」
  • あいちトリエンナーレ2013, あいちトリエンナーレ2016, あいちトリエンナーレ2019, 国際芸術祭「あいち2022」
  • あいちトリエンナーレ2010, あいちトリエンナーレ2013, あいちトリエンナーレ2016, あいちトリエンナーレ2019, 国際芸術祭「あいち2022」
  • 国際芸術祭「あいち2022」
  • 国際芸術祭「あいち2022」
  • 国際芸術祭「あいち2022」
  • 国際芸術祭「あいち2022」
  • あいちトリエンナーレ2019, 国際芸術祭「あいち2022」
  • あいちトリエンナーレ2016, あいちトリエンナーレ2019, 国際芸術祭「あいち2022」
◎国際芸術祭「あいち」では、どの役割でボランティアを行いましたか?
  • 対話型鑑賞ボランティア, 会場運営ボランティア, ガイドツアーボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, ガイドツアーボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, 会場運営ボランティア, ガイドツアーボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, 会場運営ボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, ガイドツアーボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, 会場運営ボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア, 会場運営ボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア
  • 対話型鑑賞ボランティア
◎どの会場で、おもにボランティアを行いましたか?
  • 芸文センター
  • 芸文センター, 常滑, 有松
  • 芸文センター, 有松
  • 芸文センター, 一宮, 常滑, 有松
  • 芸文センター, 一宮, 有松
  • 芸文センター, 一宮, 常滑
  • 一宮
  • 芸文センター, 常滑
  • 芸文センター, 常滑, 有松
◎なぜ、新設された「対話型鑑賞ボランティア」に応募してみようと思ったのですか? 応募動機をお聞かせ下さい。
  • 美術館で対話型鑑賞のボランティアをしています。対話をすると新しい発見があったり、見方が変わって面白いと思っていたので、現代美術だとみんなわからないなかで思いもよらない意見が出て、みんなで会話しながら「お宝探し」をしたく応募しました。
  • ガイドツアーの専門研修で学んだ対話型鑑賞をツアー以外のお客様にも体験していただけると思ったから。
  • 豊田市美術館のボランティア活動などを見ていて興味があったので。
  • あいちトリエンナーレ2019と国際芸術祭「あいち2022」の両方で、会田大也さんから、お客様にとって対話型鑑賞が作品が自分事になるきっかけになることを、分かりやすく教えていただいた。お客様は、今の社会で作品が自分と相通じていることが分かれば、きっと嬉しいし元気をお渡しできることになるだろうと思い、「対話型鑑賞ボランティア」に応募しました。
  • 今回、ボランティアというものに生まれて初めてトライしたので、実は、ガイドツアーボランティアと対話型鑑賞ボランティアとの違いは良く分からないまま応募しました(汗)。アート好きが高じたガイドツアーボランティアへの応募でしたので、落選してもとにかく来場者に作品の説明ができるのであれば、できることは何でもやってみようという勢いで対話型にもチェックを入れたのです。申し訳ないのですが、その点、業務内容を理解し意識的に対話型鑑賞ボランティアにご応募されたみなさんとは、少し事情が異なっているかと思います。
  • 来場者と一緒に鑑賞を楽しめると思ったから。
  • 人との関わりが好きだから。
  • ガイドツアーボランティアを希望していたが叶わなかったため。
  • ガイドツアー以外にもほかの誰かと鑑賞する機会を提供できることに魅力を感じたから
◎芸術祭会期が始まる前、対話型鑑賞ボランティアはどんな活動になると予測していましたか?
  • 慣れないボランティアの方は、どこから話せばいいのだろうと迷うと思いました。私は、会田さんが研修で例えば、鑑賞者の方から「おいしいお店を教えてください」とかの質問でも答えていいですよと言われて、心が楽になりました。実際聞かれることはなく、さみしかった。
  • Tシャツ効果で、お客さまからもっと声を掛けられると思っていた。反対にそうではないお客さま(一人で静かに鑑賞したい人)もいらっしゃるので、こちらから声掛けするのは難しいだろうと思っていた。
  • 来場者と楽しく対話ができる活動。
  • 芸術祭会期が始まる前に国際芸術祭「あいち2022」は、あいちトリエンナーレ2019よりも日本との距離が遠い地域の作品が多いことが分かりましたので、対話型鑑賞ボランティアはその距離の遠さを超えて作品に共感していただく支援活動になると予測しました。
  • 現場で声掛けをして、その場ですぐに鑑賞者に受け入れられるものなのか、多少不安を感じていましたが、ガイドツアーも声掛けで集客をするので、似たような活動になるのかなと漠然と考えていました。
  • たくさんの方々と対話型鑑賞を通してコミュニケーションが取れる。
  • 人と関わり、自分もお客様も楽しいボランティア。
  • 様々なことを尋ねられ、回答するものと思っていた。
  • 有意義なポジションとは思うけど、会場運営ボランティアとどう棲み分けるんだろうか(そして、おそらく曖昧になるだろう)と思っていました
◎芸術祭会期中、ボランティアとして活動するうえで、工夫した点、努力した点などがあればお聞かせ下さい。
  • 話しかけられるように、丸いメガネやツッコミどころのあるファッションをして臨みました。そこからお客様から話しかけられて会話をすることが多かったです。賢そうな雰囲気を出さず、おもしろさを大切にし、わからない質問はわからないと答えることにしました。作品を何度もみる。その作品を鑑賞する方々をみて反応をみていました。
  • 対話型鑑賞の4つの問い(みる・考える・話す・聴く)をA4サイズで準備した。お客さまをよく観察して、ここぞというところで声を掛けた。見終わって移動する時や、長く立ち止まって考え込んでいる様子の時などはうまくいった。お客さまに楽しく過ごしていただけるよう心がけた。
  • 作品や作家についての知識を得る勉強を欠かさなかった。
  • お客様が作品をみた時の第一印象から「ふと」発した言葉を必ず肯定できる様に、そしてそれを足がかりとして作品とお客様の接面積を増やしてゆけるように、工夫しました。
    知識の面では、作家と作品の社会学的背景や製造技術的背景を、作家のインスタグラムや英語論文や英語書籍で事前に調べていました。
    お話しする際には、お客様が「これは紙?」とふとおっしゃったら、「素晴らしい! お分かりになったのですね、この材料はラテン語の学名のなかにパピルスという言葉が入っています。つまり紙になる植物というわけなのです」と執事のようにご支援する立場でお話しするように努力しました。
  • 現場で声掛けを頻繁に行わないと対話型鑑賞ボランティアの存在に気づいて貰えないことが分かり、声がけの機会を自分なりに多くしました。「Ask Me Anything」のTシャツは対話型としてはあまり訴求できていなかった(他のボランティアとの違いが分かりにくかった)ように思えましたので、もっと違ったかたちで存在をアピールできれば良かったのですが、悪目立ちもいけないので声掛けに集中しました。しかし、成果はあまり芳しいものではありませんでした。ただ、対話の際には作品にまつわる資料も一応用意し、鑑賞者からの定番とも言える説明型の要求にも応えられるようにするとともに、それを対話に戻るきっかけにも利用しました。
  • 常に笑顔で話しかけやすいように心がけていました。
  • 笑顔で自分から話しかけること。
  • お客様が疑問に思われることに可能な限り回答しようと思った。
  • ポジションについた展示室のキャプションを読んで、誰でも触れられる情報は把握しておいた
    静かに鑑賞したい人もいるのであまり積極的に声掛けせず、ごあいさつをしたり、触れる展示には触ったりしながら様子を見た
◎美術館などで作品を鑑賞する際に、どんなことを気にして作品鑑賞していましたか?/するようになりましたか?
ボランティア活動をする前後で、ご自身のなかで変化が起きたことがあれば、お聞かせ下さい。
  • キャプションを見ずに、まずはじっくり作品をみる。まわりの鑑賞者の話をこっそり聞いたりして、心のなかでふむふむと思う。
    以前は解説を読んでガチガチに暗記してのぞむガイドの姿勢でしたが、参加者の方々のあらゆる意見におまかせして、心を楽にしてガイドするようになりました。今はガイド活動がないので、心おきなく鑑賞を楽しんでいまーす。
  • 自分好みの作品を中心に鑑賞していたが、最近は何でもまずじっくりとみるようになった。そして、気づいたことを人に話したいと思うようになった。
  • 自分の経験や主観だけで作品をみなくなった。他者の経験を考えるようになった。
  • 国際芸術祭「あいち2022」にいらっしゃったお客様を通して、日々の生活で不平等を良しとしたり放置したりする状態への「苛立ち」が、お客様と遠い地域の作家との連携を生んでいることを強く感じました。
    Nyakallo Malekeは日用品を用いた作品を展示しました。お客様が作品の先端にぶら下がっているのが「金属たわし」であることに気づかれると、それををご覧になりこうおっしゃいました「私はこれで、下らない男たちがダメにしている社会を、うちの台所のようにすっかり磨いて綺麗にしたいわ。マレケさんもそう思っているわよ」
    ボランティア以後は「苛立ち」が現代美術の鑑賞のキーワードとなりました。
  • 一番の変化は作品をみる時間が長くなったことです。今回のボランティアを経験するまでは、ご多分に漏れず展示会場の解説を読む時間の方が、作品をみる時間よりも長かったのですが、今は気づきたい気持ちが強くなり、よくみることと自分に問いかけることが機能し始めたと感じています。また、今回のボランティアで少し心残りだったのは、「みえない・みえづらい方のためのツアー」「筆談ツアー」といった特別なツアーに参加しなかったことです。初めてのボランティア活動ということもあって、気持ちに余裕が持てずエントリーしなかったのですが、特に「みえない・みえづらい方のためのツアー」は、まったく違った視点からのアート鑑賞に立ち会える機会だったかもしれないと後から思いました。
  • 自分だけの視点にこだわらない。
  • 誰かに説明することをイメージトレーニングしながら鑑賞するようになった。
  • アーティストの思いについて自分なりにどう考えるか、伝えることが必要と考えた。
  • 活動前はひとりで鑑賞するのがメインのスタイルでしたが、活動に携わってからはグループで鑑賞に出かける機会が増えました(単純にボランティアを通じてアート仲間が増えたこともあります 笑)
    作品に対峙して記録写真を撮ってすぐに立ち去る、という過去の自分の鑑賞スタイルをもったいないと感じるようになりました
◎ボランティア活動中、または、後日談として印象的だったエピソードがあればお聞かせ下さい。
  • Tシャツの話をします。ガイドツアーボランティアの時です。終わった後、「ちょっといいですか? 後ろを向いてください。何でも聞いてくださいとTシャツに書いてますが、このTシャツ着てる人に声かけていいんですか?」と質問。対話型鑑賞のことをお話しすると、「そうなんだ! もっと早く教えて欲しかった! もっとそのことをアピールして欲しいーー!!」と言われました。みえないみえづらい人のツアーに入りました(ガイドツアーはこのツアーに関わりたいのもあり、応募しました)。「作品に触ることができるのが、ワクワクする!」と手を入念に消毒されていました。次回は触ることのできる作品が増えるといいなと思います。後日談というか、同じ勤務先で部署の違う人と偶然ボランティアの当番日が一緒でその時から、お話できるようになり、今では勤務先の美術トークで話に華が咲いています。今年、私にとってつながりができ、成長できた出来事でした。ありがとうございました。また、次回も宜しくお願い致します。
  • ミシェック・マサンヴの絵の前で小学生の男の子と父親が考え込んでいる様子。声を掛けた。「何かみえますか?」父親は「よくわからない」と答えた。子供も首を傾げた。私は「足みたいなものがみえます」と言うと、子供が、「僕もみえた、3人いるよ」。それからしばらく話が弾み、別れるときにロバート・ブリアのフロートをじっくりみてねと伝えた。2人で作品を一周して父親は他へ。子供はフロートが動いているのを発見して、父親を呼びに行き2人で話しながらみていた。その後、8階の渡辺篤の部屋にいると、あの親子がきた。父親が「今日は話してくれてありがとう。いつもは早く帰ろうという子供が、今日は違った。おかげでゆっくりみることができた」と話してくれた。仲のいい親子連れにたまたま声を掛けたということかもしれないが、楽しそうに話す親子に出会えて、私もあたたかい気持ちになったというエピソードです。
  • グループ行動や人と話すことが苦手そうな高校生の女の子が、小寺さんの焼き物作品をみた時に初めて口を開いてくれて、「実家が陶芸をやっているので大変さが分かる」と目を大きくしながら教えてくれた日のこと。自分が荒川修作作品に執着していたためか、まわりのボランティアさんから荒川作品についての子供たちの意外なエピソードを教えてもらえたことで、より見方が深まった。
  • ボランティア活動中、ミャンマー出身の出展作家Shwe Wutt HmonさんKyi Kyi Tharさん姉妹とインスタグラムを通じて知人となりました。Shweさんは私が撮影した国際芸術祭「あいち2022」でのお二人による作品展示の様子をSNSで紹介して下さると共に、直近の活動も教えて下さいました。
    その後、Shweさんを通じてミャンマーへの関心は増し、当時ミャンマー軍に拘束されていた久保田徹さんの素晴らしい映像作品を知り、久保田さん解放の署名活動に参加致しました。
  • 会期最終日のガイドツアーで、シュエ ウッ モンの《雑音と曇りと私たち》をガイドしました。テントの正面中央には大きめのモノクロームのネガティブプリントが掛けてあります。何が写っているのか自分でも判然としなかったので、ネガポジを反転させて内容を確認し、ボランティアの現場にもプリントアウトしたものを持ち込みました。最終日ということもあって参加者は少し多めです。この作品に思い入れのある方だったのでしょう、そのなかの一人が反転プリントをみて、木に架かったフィルムの下で安らかに寝ている妹の姿にみとれて不意に涙ぐんだのです。何気ない平和な暮らしを求めているだけなのに、安らぎの一瞬さえプリントをネガティブにして大きく掲げ訴えなければならない状況を思い、胸にこみ上げるものがあったのだろうと思います。鑑賞にはみる者の感受性が大きく作用するものだと思うのですが、自分の感性を揺さぶる作品に出会えることは、アート鑑賞の醍醐味の一つだなと思った出来事でした。
  • 残念ながら特にありません。
  • お客様に説明をしている時に、すごく驚かれていたこと。
  • 特にありません。
  • 有松会場のプリンツ・ゴラーム作品にて
    はじめは無言で映像を見ていた二人連れに「なんかクセになりますよね…」と話しかけ、ひとことふたことお話ししました。その後、ふたりだけであれこれ話しながら、40分超の映像を最後まで鑑賞しきってくれました
    対話型鑑賞ボランティアの役割は、最初から最後まで鑑賞を手引きするのではなく、「展示室で話してもいい」「声を出して笑ってもいい」「自由な感想を持っていい」ことをそれとなく伝えることだったのかもしれないな、と思います