展示・公演等
札本彩子
Fudamoto Ayako
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
作品解説
いのちの食べかた
独自の手法で食品や食材を模した立体作品を手がける札本彩子は、作品を通じて食と私たちが生きる社会との接点や意外な結びつきを視覚化してきました。日常生活のなかで食について考察することは、食に対する知覚や感覚を拡張する試みでもあります。質感にこだわって細部までつくり込んだ作品は、食品サンプルとは違い必ずしも美味しそうには見えませんが、それはそこに人間の欲求や食を取り巻く問題が生々しく表現されているからかもしれません。
食べものとそうでないものの境界に関心をもってきた札本が今回注目したのは牛肉です。札本は、何気なく口にする牛肉はもともと一頭の牛の一部であり、それが解体されて食材になるという、当然でありながら普段見過ごされがちな事実に目を向け、その過程を淡々と描き出しました。牧場や食肉処理場を訪れ、また食品の生産から消費までを扱ったドキュメンタリー映画『いのちの食べかた』(2005年)にも影響を受けて、無意識のうちに遮断された、食肉になる前の状態への想像力の回復を試みます。道端でふと、金網跡のついたモルタルがステーキ肉に見えたという自身の経験に基づいた《ステーキ岩》では、全く異なる文脈でもふとした瞬間に食への知覚が刺激されることを示唆しています。
牛の首、枝肉、私たちの食卓に並ぶ料理としての肉という一連のプロセスを辿ることによって、札本は普段意識にのぼることのない動物から食物へのあわいに意識を向けるよう鑑賞者を導きます。
会場
愛知芸術文化センター B2F
アートスペース X
プロフィール
- 1991年山口県生まれ。京都府拠点。
札本彩子は、食品工場やフードデリバリーで働いた経験をもとに、現代の食を考察している。これまで、食卓にのぼらないまま廃棄される食品を目の当たりにしてきた札本にとって、消えゆく食品のレプリカを制作することは、食の記憶の再現であり、自身を取り巻く食の状況の整理でもある。
- 主な発表歴
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- 2024
- 「アーティスト・イン・ミュージアム AiM Vol. 16 札本彩子」岐阜県美術館
- 2023
- 「なめらかでないしぐさ 現代美術 in 西尾」尚古荘不言庵(愛知)
- 2023
- 個展「Replicant─ 食卓のかたち─」東御市梅野記念絵画館・ふれあい館(長野)
- 2022
- 「Kyoto Art for Tomorrow 2022─京都府新鋭選抜展」京都文化博物館
- 2020
- 個展「Black Box」KUNST ARZT(京都)
- 《pavlov’s dog》 2021