展示・公演等
ジョン・アコムフラ
John Akomfrah
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- ジョン・アコムフラ《目眩の海》2015
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
目眩の海
ジョン・アコムフラの3チャンネル映像インスタレーション《目眩の海》(2015年)は、人間と海の関係を考察する作品です。地球規模の人の移動、難民危機、大西洋の奴隷貿易、そして生態学的な懸念をめぐる歴史を織り交ぜながら、海を主人公として描く複数の物語を紡ぎ出します。このインスタレーションは、ニューファンドランド沖での捕鯨の暴力的な光景、北極の流氷上でのホッキョクグマ猟、ヨーロッパを目指して海難事故に遭う移民と漂着した遺体、奴隷船の映像、核実験場や深海石油掘削の場としての海といったイメージを並置して映し出しています。ここでの海は墓地であり、美の記憶と並んで、産業による搾取、気候変動、移民や奴隷たちの大量死といった暴力的な光景も宿しています。この作品によってアコムフラは、ベニン王国出身の解放奴隷であり、後に英国の奴隷制度廃止運動家、海商人、北極探検家となったオラウダ・イクイアーノ(1745頃–1797年)の驚くべき物語を語ります。
ブリストルを拠点とするBBCの自然史班とともにスカイ島、フェロー諸島、ノルウェー北部で撮影された《目眩の海》は、J・M・W・ターナーの海景画、テオドール・ジェリコーの《メデューズ号の筏》(1818–1819年)、カスパー・ダーヴィト・フリードリッヒの風景画を直接参照しています。また、映像の合間には、ラルフ・ワルド・エマーソンの文章、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』(1851年)、ヴァージニア・ウルフの『波』(1931年)、ヒースコート・ウィリアムズの詩『鯨の国』(1988年)から引用したテキストが挿入されています。
会場
愛知芸術文化センター 8F
愛知県美術館ギャラリー
プロフィール
- 1957年アクラ(ガーナ)生まれ。ロンドン(英国)拠点。
アーティスト、映画制作者として著名なジョン・アコムフラは、記憶、ポスト植民地主義、一時性、美学を探求し、世界中に存在する移民に着目して、しばしばディアスポラをテーマにしている。1982年にはロンドンで、デヴィッド・ローソンやリナ・ゴポールらとともに、影響力を持つブラック・オーディオ・フィルム・コレクティブを設立。ローソン、ゴポールとの協力関係は今なお続いており、アシティー・アコムフラを加えたスモーキング・ドッグ・フィルムズとして活動している。記録映像、スチール写真、撮り下ろし、ニュース映画を組み合わせた多層的な視覚様式で制作した画期的なマルチチャネル映像のインスタレーションは、国際的に注目を集めている。
- 主な発表歴
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- 2024
- 第60回ヴェネチア・ビエンナーレ、英国館(イタリア)
- 2023–24
- 個展「A Space of Empathy」フランクフルト・シルン美術館(ドイツ)
- 2023
- 個展「Five Murmurations」国立アフリカ美術館(ワシントンD.C.、米国)
- 2023–24
- 個展「Arcadia」ザ・ボックス(プリマス、英国)
- 2022–24
- 個展「John Akomfrah: Purple」ハーシュホーン博物館(ワシントンD.C.、米国)
- 《Vertigo Sea》 2015
- © Smoking Dogs Films; Courtesy of Smoking Dogs Films and Lisson Gallery.