展示・公演等
是恒さくら
Koretsune Sakura
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- 是恒さくら《白華のあと、私たちのあしもとに眠る鯨を呼び覚ます》2025
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
白華のあと、私たちのあしもとに眠る鯨を呼び覚ます
アラスカ大学フェアバンクス校で先住民芸術を学んだ是恒さくらは、鯨類と人との関わり方に関心を寄せ、世界各地でのフィールドワークを通じて知り得たことをエッセイや詩として刊行したり、刺繡作品として発表したりしてきました。
愛知県の渥美半島では、縄文時代の貝塚から鯨類の骨器がいくつも見つかっており、古くから浜に漂着した鯨を食べ、骨を道具として利用してきたことが窺えます。また知多半島南端の師崎は、突き取り式の捕鯨技術発祥の地として知られています。この技術は江戸時代初頭に和歌山県の太地ほか各地に伝わり、やがて師崎からは失われましたが、伊勢湾を挟んだ三重県の四日市の祭礼に今もその名残が感じられます。さらに、捕鯨船が南極海から鯨肉を塩漬けにして持ち帰っていた戦後の食糧難の時代には、瀬戸と同じく陶磁産業で栄えた常滑で、鯨の脂と血に染まったその塩が土管向けの安価な釉薬として用いられていました。
是恒は、愛知県と鯨類のこうした意外に深い関わりを掘り起こし、まちが近代化してゆくなかで忘れられていった鯨たちの姿を蘇らせようとします。海の色に染まった魚網の先に横たわる鯨の全身骨格は、名古屋港に漂着したマッコウクジラの骨や、かつて日本中の地下に張り巡らされた土管、骨を模して制作した塩釉の陶作品などを組み合わせてできています。その上を、もう一頭の刺繡による巨大な鯨がゆったりと泳いでいます。
会場
愛知芸術文化センター 8F
愛知県美術館ギャラリー
プロフィール
- 1986年広島県生まれ。広島県拠点。
2010年アラスカ大学フェアバンクス校卒業。在学中はネイティブ・アート、絵画、彫刻を学ぶ。2017年東北芸術工科大学大学院修士課程修了。国内外各地の鯨類と人の関わりや海のフォークロアをフィールドワークを通して探り、エッセイや詩のリトルプレス、刺繍作品として発表する。リトルプレス『ありふれたくじら』主宰。2018年〜2021年、東北大学東北アジア研究センター災害人文学ユニット学術研究員。2022年~2023年、文化庁新進芸術家海外研修制度・研修員としてノルウェーに滞在し、オスロ大学文化研究・東洋言語学科の研究プロジェクト「Whales of Power」に客員研究員として参加。
- 主な発表歴
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- 2024
- 「currents / undercurrents─いま、めくるめく流れは出会って」国際芸術センター青森
- 2023
- 「Whales of Power」オスロ大学人文社会学図書館(ノルウェー)
- 2022
- 「VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」上野の森美術館(東京)
- 2022
- 「NITTAN ART FILE 4:土地の記憶~結晶化する表象」苫小牧市美術博物館(北海道)
- 2021
- 「ナラティブの修復」せんだいメディアテーク(宮城)
- 《鯨を解き、鯨を編む》 2021
- Photo: KOIWA Tsutomu
- Courtesy of Sendai Mediatheque.