展示・公演等
ムハンマド・カゼム
Mohammed Kazem
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- ムハンマド・カゼム《旗のある写真》1997-2003
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
ムハンマド・カゼムは、ビデオ、写真、パフォーマンスをメディアとする作品を通して、自らを取り巻く環境や個人的な経験を捉えるための新たな方法を模索してきました。その作品は、主に空間と時間の局所化や光の可変性をテーマとして、急激に近代化が進んだ母国、ドバイにおける文化的アイデンティティの喪失に関わる問題を提起しています。
カゼムの作品には、しばしばアーティスト自身の姿を見ることができます。《方角》(2002年)では、GPS座標が記された木片がカゼムによって海に投げ込まれ、漂流し別の場所へと運ばれて行く様子が写真と映像に収められています。この作品はかつて海に落ちて途方に暮れ、無力感に襲われた自らの経験に着想を得ています。座標が漂流することで方角を知る手掛かりは失われ、現在と未来の境界線が曖昧となる一方、何にも縛られない無限の可能性を示唆するようでもあります。
《旗のある写真》(1997-2003年)において、ドバイの開発予定地を示す旗の傍に立ち、砂漠や海の景色、道路や建物などの新たなインフラが建設される場所を見つめるカゼムの姿は、時代と変化の証人であるかのようです。その写真は観るものに場所の記憶を呼び起こし、さらに未来へと導いてくれます。この作品では長期間にわたり、刻々と変わりゆく風景のなかで立ち止まり、見過ごされていくものへまなざしを向け続けています。
会場
愛知芸術文化センター 8F
愛知県美術館ギャラリー
プロフィール
- 1969年ドバイ(アラブ首長国連邦)生まれ。ドバイ(アラブ首長国連邦)拠点。
ムハンマド・カゼムは、ビデオや写真、パフォーマンスなど多彩な表現手法を用いて、自身の環境や経験を新たな視点から捉え直す作品を生み出してきた。その作品には音楽を学んだ経験が大きな影響を与えており、音や光といった一時的な現象を具体的な形で表現するプロセスを探求している。作品にはしばしば彼自身が登場するが、とりわけ建国以来急速に現代化が進むアラブ首長国連邦に関連づけながら、自らの主観を主張する手段として、地理的な位置や物質性、要素に呼応している。キャリア初期にエミレーツ美術協会に参加。同国の先駆的なアーティスト、ハッサン・シャリフ、アブドラ・アル・サーディ、ムハンマド・アフメド・イブラヒム、フセイン・シャリフと形成した非公式なグループ「ザ・ファイブ」のメンバーとして、コンセプチュアル・アートや複数の学術分野の中間領域を探求するアートを実践している。2012年に米国フィラデルフィアにあるジ・アーツ大学で美術学修士号を取得。
- 主な発表歴
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- 2023
- 「Manar Abu Dhabi」サマリヤ島(アブダビ、アラブ首長国連邦)
- 2022
- 第16回リヨン・ビエンナーレ「manifesto of fragility」(フランス)
- 2016
- 第1回銀川ビエンナーレ(中国)
- 2015
- 第12回シャルジャ・ビエンナーレ「The past, the present, the possible」(アラブ首長国連邦)
- 2013
- 第55回ヴェネチア・ビエンナーレ、アラブ首長国連邦館(イタリア)
- 《Photographs with Flags》 1997
- Courtesy of the artist and Gallery Isabelle, Dubai