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国際芸術祭あいち2025、テーマ:灰と薔薇のあいまに、会期:2025年9月13日(土)から11月30日(日)79日間、会場:愛知芸術文化センター/愛知県陶磁美術館/瀬戸市のまちなか国際芸術祭あいち2025、テーマ:灰と薔薇のあいまに、会期:2025年9月13日(土)から11月30日(日)79日間、会場:愛知芸術文化センター/愛知県陶磁美術館/瀬戸市のまちなか

展示・公演等

小川待子

Ogawa Machiko

  • 現代美術
  • 愛知芸術文化センター

展示情報

  • 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
  • 小川待子《結晶と記憶:五つの山》2020
  • ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
  • 撮影:ToLoLo studio
作品解説

小川待子は、ゆがみ、ひびや欠け、釉薬の溜まりなど、磁器土やガラスの性質を活かし、《水盤》のように創造と崩壊の両義性をもつ「うつわ」としての作品を制作しています。このような造形思考へと至ったのは、パリ滞在中に鉱物博物館で鉱物の美しさに目を開かれ、「かたちはすでに在る」と気付いたからだと言います。
〈結晶と記憶〉シリーズも同様の思考がうかがえる代表作です。磁器土の塊とガラスがひとつになって静謐な光を湛える造形は、さながら長い時間の記憶を内包した結晶を、大地から掘り起こしたかのように見えます。
陶器土や磁器土の原料となる石英や長石は、マグマが地面の深層で冷え固まってできた花崗岩が、1000万単位の年月を経て風化・堆積したものです。それゆえ、やきものづくりは気の遠くなるような時間を越えてきた素材と向き合いながら、熱を与えて不可逆な変容をもたらすことなのです。そして一度やきものになると、簡単には分解・風化せず、万年単位でかたちは残り続けます。
やきものは、人が知覚的に把握できない地質学的なスケールによる物質変化の時間軸と、人の時間軸の交差によって生まれます。今日のやきものづくりは、原料の調達から製造、販売に至るまで高度にシステム化され、本来の性質や成り立ちは見えにくくなっています。小川の作品は、こうしたやきものの根源的な性質を露わにします。作家によって見出だされ、再び結晶化した「かたち」は、これからどれだけの時を重ねて記憶を紡いでゆくのでしょうか。

会場

愛知芸術文化センター 10F
愛知県美術館

プロフィール

  • 1946年北海道生まれ。東京都拠点。

東京芸術大学工芸科を卒業後、1970年からパリ国立高等工芸学校を経た後、人類学者の夫の調査助手として西アフリカ各地で3年半を過ごし、現地の土器づくりの技法を学ぶ。パリ滞在中に鉱物博物館で、鉱物の美しさの中に「かたちはすでに在る」という考え方を見だし、ゆがみ、ひびや欠け、釉薬の縮れなどの性質を活かし、つくることと壊れることの両義性を内包する「うつわ」として、始原的な力を宿す作品を制作している。

主な発表歴
2024
「鉱脈」思文閣(京都)
2023
「Shiryū Morita, Machiko Ogawa」ギャラリー・フランク・エルバズ(パリ、フランス)
2023
「エマイユと身体」銀座メゾンエルメスフォーラム(東京)
2022
「Toucher le Feu」国立ギメ東洋美術館(パリ、フランス)
2019
《掘りだされたとき》(コミッション・ワーク)カタール国立美術館(ドーハ)
  • 《結晶と記憶:五つの山》 2020
  • Photo: Tadayuki Minamoto
  • Courtesy of Shibunkaku