展示・公演等
プリヤギータ・ディア
Priyageetha Dia
- 現代美術
- 愛知芸術文化センター
展示情報
- 国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
- プリヤギータ・ディア《熱の哀歌》2023
- ©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
- 撮影:ToLoLo studio
作品解説
熱の哀歌
プリヤギータ・ディアは、東南アジアの労働史や植民地の記憶をテーマに、支配的な歴史的観に挑む作品を制作しています。本作《熱の哀歌》は、マレー半島のゴム農園における植民地の歴史と、そこで働いていたタミル系移民の記憶を呼び覚ます映像インスタレーションです。「LAMENT」(悲嘆)はタミル人女性が葬儀で歌う伝統的な追悼歌「オッパリ」を、「H.E.A.T」はタミル語を交えたディアによる造語「Hevea Errichal Automation Tech」を指し、ゴムノキと、熱、痛み、搾取にまつわる儀礼的なテクノロジーを連想させます。
展示室に立ち現れる部屋は、ゴムの木や天然ゴムのシートで構成され、ゴムの樹液採取跡を思わせるヘリンボーン模様が外壁に刻まれています。部屋の中には伝統的打楽器のリズムが響き、3Dアニメーションでつくられたゴム農園を舞台にした映像に、自ら燃え上がる樹木など「熱」を象徴するイメージが映し出され、AIにより生成された「オッパリ」をドローンが広めています。植民地期のマラヤ(マレー半島南部およびボルネオ島北部)に南インドからきた年季奉公の移民が持ち込み、プランテーション経済の暴力により命を落とした労働者たちの死を悼むために歌われた「オッパリ」は、テクノロジーを介して再演され、非人間的な存在や土地の記憶と交感する儀礼として立ち上がります。ディアは、歴史の空白や抑圧された声に想像力で光を当てて新たな物語を生成し、私たちが歴史と向き合うとともに、記憶を未来へと継承する新たな方法を提示しています。
会場
愛知芸術文化センター 8F
愛知県美術館ギャラリー
プロフィール
- 1992年シンガポール生まれ。ハーグ(オランダ)拠点。
プリヤギータ・ディアは、時間と共に展開するタイムベースド・メディアやインスタレーションを手掛けるアーティスト。その作品には、東南アジアの労働の歴史、熱帯地域へのまなざし、祖先の記憶と機械の論理の邂逅などのテーマが編み込まれている。過去の記録やフィールドでのリサーチを通じて、単線的ではない思考のあり方を探求し、主流の言説を拒む実践を展開。現在はオランダを拠点に活動している。
- 主な発表歴
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- 2024
- バンコク・アート・ビエンナーレ2024「Nurture Gaia」(タイ)
- 2024
- マニフェスタ15バルセロナ(スペイン)
- 2024
- 第60回ヴェネチア・ビエンナーレ関連イベント「The Spirits of Maritime Crossing」スミス・マンジッリ・ヴァルマラーナ館(イタリア)
- 2024
- ディルイーヤ・ビエンナーレ2024「After Rain」(リヤド、サウジアラビア)
- 2023
- フリーズ・ソウル2023(韓国)
- 《LAMENT H.E.A.T》 2023
- Courtesy of the artist